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痩せるには、努力よりも代謝の土台づくり。

「食べる量を減らせば、簡単に痩せるはず」。

とてもシンプルで、一見正しそうな考え方です。

ところが、この「引き算」だけを続けていくと、多くの人が同じ壁にぶつかります。最初は落ちても、やがて止まり、少し気を抜くと戻ってしまう。

その理由は、少し意外なところにあります。精密栄養学では、食べる量が急に減ると、体が「サバイバルモード」に切り替わって、エネルギーの使い方そのものを変えてしまう、と解釈します。がんばっているのに報われないのは、努力不足のせいというより、体が生き延びようとして働いている結果でもあるのです。

今回は、さまざまな「痩せる方法」を試す前に理解しておきたい、その土台となる「痩せる体」そのものの整え方を、じっくり見ていきます。

「食べないほど痩せる」が、うまくいかない理由

まず知っておきたいのは、体には「一定の状態を保とうとする力」が備わっている、ということです。

極端な食事制限を続けると、体はエネルギーが足りない状態だと認識し、少しずつ省エネモードに切り替わっていきます。すると、減った体重以上に、消費するエネルギーが下がっていくことがあります。

とはいえ、これで代謝が「激減して、まったく痩せなくなる」わけではありません。消費エネルギーが下がる幅はそれほど大きくないことが多く、むしろ痩せにくさの本当の原因は、過剰な食事制限が辛くて続かないこと、筋肉が落ちてしまうこと、そして日々の活動量が気づかないうちに減ってしまうことの方にあります。

特に気をつけたいのが、筋肉です。急に食事を大きく減らすと、脂肪だけでなく筋肉も落ちやすくなります。筋肉は、食後の糖を受け取るための重要な場所です。筋肉が減ってしまうと、同じ食事を食べても血糖を処理しきれず、かえってリバウンドしやすい体質に傾いてしまいます。

もう一つの鍵が、血糖とインスリンです。糖質に偏った食事で血糖が急に上がると、それを下げるためにインスリンがたくさん分泌され、余った糖を脂肪としてため込みます。この状態が続くと、次第にインスリンが効きにくくなっていきます。そして内臓脂肪が増えると、さらにインスリンが効きにくくなる。こうした悪循環が、少しずつ体を「ため込みやすい」方へと変化させていきます。

同じ方法でも、人によって結果が違う

もう一つ、重要な前提があります。それは、痩せ方に「万人共通の正解」はない、ということです。

たとえば、健康にいいとされる玄米やお蕎麦でも、ある人にとっては血糖をぐっと上げてしまうことがあります。何にどれだけ反応するかは、その人のインスリンの効き方や体質によって驚くほど変わります

同じように、腸内環境や消化力にも、大きな個人差があります。胃酸の分泌が少なめの方は、同じ量を食べても、たんぱく質や鉄・亜鉛などをうまく吸収できず、代謝の土台を作りにくい場合があります。過去に極端な食事制限を繰り返してきた方は、すでに筋肉が落ちてしまっていて、ダイエットの結果が出るまでに時間がかかるケースも考えられます。

つまり、他の誰かに効いた方法が、そのまま自分に合うとは限りません。自分の体の反応を知りながら、少しずつ体づくりの設計をしていく。それが遠回りのようで、いちばん確かな道なのです。

数字だけでは見えない「土台」を、血液検査から読む

健康診断の数値も、「痩せやすさの土台」という視点で見ると、少し違った解釈ができるようになります。

ただし、ここでお伝えするのは、あくまで「読み方の一つの視点」です。どれも単独で何かを断定できるものではないことに注意してください。

空腹時インスリン
この値が高めの時は、インスリンが効きにくく、脂肪をため込みやすい状態になっている可能性があります。

HbA1cや食後の血糖
普段の血糖の変動が、どれくらい安定しているかの目安です。

FT3など甲状腺のホルモン
代謝というエンジンが、どれくらい回りやすい状態かを示します。

総たんぱく・アルブミン
たんぱく質の摂取状況や、消化・吸収力、肝臓の状態などを反映します。ただし、体内に炎症がある場合などでも数値は変動します。

肝臓の数値(ALT・γ-GTP)
この数値が高い時は、脂肪肝やインスリンの効きにくさと関係していることがあります。とはいえ、運動やお薬、飲酒などでも動くため、この数値だけで脂肪肝と決めることはできません。

中性脂肪:この値が高い時は、糖質や質の良くない脂質の摂りすぎのサインになります。反対に、極端に低い状態が続く時は、食事の量や脂質、栄養の吸収力などに何か課題が隠れていることもあるので、一度しっかりと調べておくと安心です。

大切なのは、血液検査項目のそれぞれの値が「基準値の中に収まっているかどうか」だけで終わらせず、その背景にある原因や理由を理解することが大切です。気になる数値や症状がある時は、必ず医療機関での受診をお勧めします。

痩せ体質を設計する、土台の整え方

ここからは、土台を整えるための具体的な工夫です。

はじめにお伝えしておきたいのは、これらはどれも「これさえやれば痩せる」という魔法ではない、ということです。痩せる・痩せないの主役は、あくまで一日の食事全体の量と質、そして運動です。ここで紹介するのは、その主役を支える「土台」だと思ってください。

続けやすいものから、無理なく一つずつ。

① 食べる順番を変える

いちばん手軽で、効果が明確なのがこれです。

野菜(食物繊維)やたんぱく質を先に食べ、ごはんやパン、麺などの糖質を最後に回す。これだけで、食後の血糖の急な上がり方を緩やかにできることが、研究で繰り返し確認されています。

血糖の波がなだらかになると、過剰なインスリンが出にくくなります。今日から始められる小さな工夫です。

② たんぱく質を、毎食しっかり

たんぱく質は、筋肉を維持するための材料です。目安は、1日あたり体重1kgにつき1〜1.5g(体重50kgなら、およそ50〜75g)。一度にまとめてではなく、一日を通して分けて摂るのがおすすめです。よく運動する方やご高齢の方は、少し多めに摂ることを意識されるとよいでしょう。

もし消化力に不安があるなら、一度に大量のプロテインを飲むより、EAA(必須アミノ酸)や、消化にやさしいボーンブロス(骨からとったスープ)などを選ぶと、胃腸への負担も軽くなります。

③ 消化の力を整える

摂取する栄養の量を増やす前に、まずは「しっかりと吸収できる状態」をつくることが先決です。

そして、よく噛むこと。これも地味ですが胃腸への負担を和らげるには非常に有効です。また、食前にレモン水や梅干しなど酸味のあるもので、消化のスイッチをやさしく入れること。胃酸を確実に増やすという強い証拠まではありませんが、負担が少なく試せる工夫のひとつです。

さらに、水溶性の食物繊維(サイリウム。オオバコとも呼ばれます)を、多めの水と一緒に摂るのも食後の血糖を緩やかにするには効果的です。ただし、飲み込みにくさや腸の持病がある方は、無理をなさらないでください。

④ 睡眠と、ストレスとの付き合い方

実は睡眠は、痩せる体づくりの、静かで大きな土台です。

「何時に寝るか」よりも、「眠り始めに深く眠れているか」が大切です。十分な睡眠は、食欲や代謝の乱れを防ぎ、太りにくい状態へと整えてくれます。「寝れば脂肪が燃える」というより、「整うことで結果につながる」というイメージです。

併せて、就寝前やストレスを感じた際は、ゆっくりとした呼吸(4-7-8呼吸など)で、日中に張りつめた心と体をゆるめる時間を持てると、なお良いでしょう。

⑤ 運動は「追い込む」より「続ける」

ウォーキングなどの有酸素運動は、内臓脂肪を減らすのに役立ちます。軽めの筋トレは、筋肉の維持と、血糖のコントロール力(インスリン感受性)を保つのに効果的です。

しかし気をつけたいのは、過剰な運動です。休養が追いつかないほど激しい運動を続けると、かえってストレスホルモン(コルチゾール)が高いままになってしまい、筋肉が落ちたり、お腹に脂肪がつきやすくなったりすることがあります。「追い込む」より「続けられる強度に抑える」ことが、結果を出す上では大事です。

⑥ 油の質を整える

揚げ物やトランス脂肪酸など、酸化した油はできるだけ控える。青魚に多いオメガ3のような、なるべく質の良い脂質を選ぶことが大切です。

これは「摂れば痩せる油」ということではなく、体の土台を健やかに保つための選択肢だと考えてください。

ありがちな「思い込み」の落とし穴

1. 極端な制限は、近道に見えて遠回り

短期間で体重が落ちても、体は省エネモードに切り替わり、リバウンドを招きやすくなります。「食べないほど痩せる」とは、必ずしも言えないのです。

2. 体重の数字に、一喜一憂しない

体重は、右肩下がりに一直線で落ちるものではありません。増えたり減ったりの波を打ちながら、ゆっくり変わっていくのが自然な姿です。日々の細かな上下に振り回されないことも、続けるための大事なコツです。

3. 断食(ファスティング)は、誰にでも合う方法ではない

食べない時間を長くとる方法は、体質によって、合う・合わないが大きく分かれます。とくに、妊娠中や授乳中の方、糖尿病でお薬を使っている方、痩せ気味の方、そして過去に食べることで悩んだ経験のある方には、向かないことがあります。試してみたいときは、自己判断で長時間の断食に踏み込まず、まずは医師や管理栄養士にご相談ください。

まとめ:体重計にのる前に、できること

痩せられないのは、あなたの努力が足りないせいではありません。多くの場合、体がエネルギー不足の危機を感じて、一生懸命に脂肪を守ろうとしている、正常な反応をしているだけかもしれません。

だからこそ、「カロリーを削って、我慢する」という発想から、「体が安心して脂肪を手放せる土台を整える」という発想へ。この切り替えが、遠回りに見えて、リバウンドをしない、ダイエットへの一番の近道になります。

まずは、今の自分の状態をデータと体感の両方から正しく理解すること。そこから、あなただけの体の土台づくりの設計図が始まるのです。

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※ この記事は、精密栄養学の考え方にもとづく一般的な情報提供であり、特定の病気を診断したり、あなたの状態を断定したりするものではありません。検査数値の意味は一人ひとり異なり、ここで紹介した読み方も、あくまで一つの見方にすぎません。気になる症状や数値、また体重が思うように変わらない状態が続くときは、自己判断で極端な食事制限や断食をなさらず、医師や管理栄養士などの専門家にご相談ください。