やる気が出ないのはなぜ?ドーパミンとセロトニンを作る栄養

やる気が出ない、気分が沈むという状態には、睡眠やストレスなど多くの理由が重なります。栄養の面から見ると、動き出す力を生むドーパミンと、気分を安定させるセロトニンが十分に作られているかが大切です。どちらもたんぱく質のアミノ酸を材料に、鉄やビタミンB6などの助けを借りて作られます。そのため、栄養素が足りないときや炎症が続いているときには、作られる量が減ることがあります。
気分の落ち込みが2週間以上続く、眠れない、食欲がない、仕事や家事が手につかないときは、栄養より先に心療内科や精神科に相談してください。この記事は、そのうえで食事から見直せることをまとめたものです。
ドーパミンとセロトニンは何をしているか
ドーパミンは、「やりたい」「手に入れたい」という気持ちを生み、行動を始めさせる神経伝達物質です。快感そのものより、そこへ向かう動機に関わります。ドーパミンが足りないと、やるべきことは分かっているのに体が動かない、決められない、先延ばしにするといった形で表れやすくなります。
セロトニンは、不安や衝動を抑え、気分を落ち着かせる働きに関わります。夜にはメラトニンに作り替えられ、眠りのリズムを整えます。セロトニンが足りないと、不安になりやすい、イライラしやすい、眠りが浅いといった形で表れやすくなります。
どちらも、たんぱく質から作られる
では、ドーパミンとセロトニンは何から作られるのでしょうか。どちらも、食事でとったたんぱく質のアミノ酸が材料です。
ドーパミンは、フェニルアラニンからチロシン、L-ドパを経て作られます。チロシンをL-ドパに変えるチロシン水酸化酵素は、ドーパミンを作る量を決める酵素で、働くには鉄とBH4(テトラヒドロビオプテリン)が要ります。
セロトニンは、トリプトファンから5-HTPを経て作られます。最初の段階を担うトリプトファン水酸化酵素も、鉄とBH4を必要とします。そして両方とも、最後の段階はAADC(DDCとも呼ばれる)という同じ酵素が担い、この酵素はビタミンB6がないと働けません。
つまり、材料のたんぱく質に加えて、鉄、BH4、ビタミンB6がそろって、はじめて両方が作られます。
鉄が足りないと、最初の段階が進みにくい
鉄は、ドーパミンとセロトニンを作る最初の段階で使われます。ところが鉄は、とくに月経のある女性で不足しやすい栄養素です。
鉄の蓄えは、血液検査のフェリチンで分かります。精密栄養学の目安は、女性50〜80 ng/mL、男性100〜150 ng/mLです。ヘモグロビンが基準の範囲に入っていても、フェリチンだけが低いことがあります。反対に、体に炎症があるとフェリチンは高めに出るのに、鉄がうまく使われないこともあります。やる気が出ない状態が続くなら、フェリチンを一度測ってみる価値があります。
BH4は炎症で減りやすく、葉酸も関わる
BH4は、体の中で作られる補酵素です。使われると形が変わるので、作り直しながら使われています。また、炎症や酸化の影響で壊れやすいとされています。
このBH4の作り直しを、葉酸が間接的に支えていると考えられています。葉酸がうまく使えないと、鉄やたんぱく質が足りていても、ドーパミンやセロトニンが作られにくくなることがあります。葉酸を飲んでも変わらない人がいる理由は、葉酸を飲んでも変わらない理由に書きました。
炎症があると、トリプトファンは別の道に回る
さらに炎症は、セロトニンの材料の使われ方も変えます。
食事でとったトリプトファンのうち、セロトニンになるのはもともと数%ほどです。大部分は主に肝臓で、キヌレニン経路という別の道を通り、エネルギー作りに使うNAD(ナイアシンからできる補酵素)などに作り替えられます。
体の中で炎症が続くと、IDOという酵素が増え、キヌレニン経路へ回るトリプトファンがさらに増えます。そのぶん、セロトニンに回る量が減ります。歯ぐきの炎症、胃や腸の不調、強いストレスが続いている場合は、栄養素をとるだけでは追いつかないことがあります。
腸では体のセロトニンの9割ほどが作られますが、セロトニンは血液脳関門を通れないため、腸のセロトニンが脳に届くことはありません。脳のセロトニンは、脳に届いたトリプトファンから脳の中で作られます。腸の状態は、炎症を通じて、脳に届くトリプトファンの量に関わります。
毎日の食事と暮らしでできること
毎食、卵や魚、肉、大豆製品などのたんぱく質を一品とる
赤身の肉やレバー、あさりなど鉄の多い食品を、ビタミンCを含む野菜と一緒にとる
鶏肉やかつおでビタミンB6を、緑の濃い野菜で葉酸をとる
睡眠の時間を確保し、朝は起きてから1時間以内に屋外の光を浴びる
歯ぐきの腫れや胃の不調が続いているなら、歯科や医療機関で診てもらう
サプリメントで補う場合は、トリプトファンなど一つの成分だけを多くとるより、まず食事と炎症を見直すほうが先です。
やる気が出ないとき、自分を責めてしまう方は少なくありません。けれど、やる気は気合いだけで生まれるものではなく、作るための材料と、作れる体の状態が必要です。まずは朝食にたんぱく質を一品足すことと、フェリチンの値を確かめることから始めてみてください。
※ この記事は、精密栄養学の考え方にもとづく一般的な情報です。病気の有無を判定したり、治療を行ったりするものではありません。体の感じ方には個人差があります。気になる症状がある時は、自己判断なさらず、医療機関にご相談ください。