生理前のイライラ・落ち込みと、栄養の関係

生理前のイライラや落ち込みは、排卵のあとに女性ホルモンのエストロゲンとプロゲステロンが変動することがきっかけで起こると考えられています。ただ、同じように変動しても、強く感じる人とそれほど感じない人がいます。精密栄養学では、その差に、エストロゲンを肝臓で処理して腸から出す流れと、気分に関わる神経伝達物質を作る栄養素が関わると考えます。
仕事や人間関係に支障が出るほどつらい月が続くときや、経血の量が多い、生理痛が強いといったときは、婦人科に相談してください。医療機関で選べる方法があります。この記事は、そのうえで毎日の食事から見直せることをまとめたものです。
ホルモンの量より、変化への反応に個人差がある
排卵のあとは、プロゲステロンが増え、エストロゲンも再び少し上がります。そして生理が近づくと、どちらも下がっていきます。つらさが強まりやすいのは、この下がっていく時期です。
では、つらさが強い人はホルモンの量が多いのでしょうか。実は、生理前のつらさが強い人とそうでない人で、ホルモンの量そのものは大きく違わないことが多いとされています。違うのは、ホルモンの変化に対する脳の反応の強さです。たとえば、エストロゲンが下がると、セロトニンなどを分解するMAOという酵素の働きが強まり、気分が沈みやすくなるという考え方があります。
エストロゲンは、肝臓で処理されて腸から出ていく
役目を終えたエストロゲンは、主に肝臓で処理されます。最初の段階で形を変えられたあと、COMTという酵素によるメチル化などを受け、体の外に出しやすい形になります。そして胆汁と一緒に腸へ出され、便として出ていきます。
メチル化には、葉酸、ビタミンB12、ビタミンB2、ビタミンB6、マグネシウムが使われます。ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜には、最初の段階で比較的穏やかな形のエストロゲンを作る経路を後押しするとされる成分が含まれています。
便秘が続くと、エストロゲンが戻ってくることがある
腸に届いたエストロゲンは、本来はそのまま便と一緒に出ていきます。ところが、便秘で腸にとどまる時間が長くなると、一部が再び吸収されて体に戻ってくることがあります。腸内細菌の中には、肝臓でつけた処理をはずす酵素(β-グルクロニダーゼ)を持つものがいると考えられています。
生理前に便秘がちになる方や、もともとお腹の調子が崩れやすい方は、腸の動きも見直してみてください。
COMTは、エストロゲンと興奮系の物質の両方を片づける
COMTは、エストロゲンだけでなく、ドーパミンやノルアドレナリンといった、気持ちを高ぶらせる物質の分解も担っています。そのため、ストレスで興奮系の物質の処理が増えると、エストロゲンの処理が手薄になり、心と体の揺らぎが同じ時期に重なりやすくなるという考え方があります。
COMTの働きの強さには、生まれつきの個人差もあります。ただし、COMTと生理前の不調の関係を人で確かめた研究は、まだ限られています。COMTが働くには、メチル化に使う栄養素とマグネシウムが必要です。
鉄、ビタミンB6、マグネシウム
気分の安定に関わるセロトニンは、トリプトファンというアミノ酸から作られ、その途中で鉄とビタミンB6が使われます。マグネシウムは、COMTによるメチル化に使われるほか、ストレスが続くと尿から失われやすいミネラルです。そして鉄は、月経のたびに失われるため、女性が不足しやすい栄養素です。
鉄の蓄えはフェリチンで分かり、精密栄養学の目安は女性で50〜80 ng/mLです。ヘモグロビンとMCVが基準の範囲に入っていても、フェリチンだけが低いことがあります。精密栄養学では、女性のヘモグロビンは13〜14 g/dL、MCVは88〜92 fLを目安に見ます。経血の量が多くて鉄が減っている場合は、食事で補うだけでなく、出血が多い理由を婦人科で確かめることが大切です。
毎日の食事でできること
野菜や海藻、水分をしっかりとり、毎日の便通を整える
ブロッコリーやキャベツなどのアブラナ科の野菜を、加熱して食卓に加える
赤身の肉や魚、卵など、たんぱく質と鉄を毎日とる
鶏肉やかつおでビタミンB6、海藻やナッツでマグネシウムをとる
生理前に甘いものが欲しくなったら、ナッツやチーズなど血糖が上がりにくいものを選ぶ
大豆製品は、一律に避ける必要はありません。豆腐や納豆、味噌は、たんぱく質やトリプトファンの供給源にもなります。気をつけたいのは、豆乳を毎日大量に飲むなど、同じ食品に偏ることです。
まずは2周期ほど、毎日の気分と体調を手帳やアプリに記録して、生理の周期と重なっているかを確かめてみてください。周期と関係なく気分の波が続くときは、ほかの理由も考えて医療機関に相談してください。気分の落ち込みが強く、消えてしまいたいと感じるときは、すぐに医療機関を頼ってください。周期と重なっていると分かれば、どの時期に何を整えるかを、自分で決めやすくなります。
※ この記事は、精密栄養学の考え方にもとづく一般的な情報です。病気の有無を判定したり、治療を行ったりするものではありません。体の感じ方には個人差があります。気になる症状がある時は、自己判断なさらず、医療機関にご相談ください。