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一般的な血液検査と、60項目血液検査でわかることの違い

一般的な血液検査と、60項目血液検査でわかることの違い

健診では「異常なし」。でも、不調が続くのはなぜ?

会社の健康診断を受けて、結果は「異常なし」。

それなのに、夕方になると体が重い。よく眠れない。理由のはっきりしないだるさが続く。

そんな経験をお持ちの方は、少なくないと思います。僕の妻もそうでした。

20代の頃から慢性的な不調を抱えていましたが、健診で引っかかったことは一度もありません。

転機になったのは、60項目の血液検査を受けた時のこと。

そこではじめて、四つのことが見えてきたのです。

消化する力がかなり落ちていること。ビタミンB12と葉酸が足りていない可能性。甲状腺ホルモンが低めであること。そして、ミネラルの不足。

ここで、ひとつ不思議に思われるかもしれません。「消化する力が落ちている」というのは、どうやって血液からわかるのでしょうか?

血液検査の項目に「消化力」というものは、実は存在しないのです。では、どうやって検査結果を見ればいいのか。一般的な血液検査と60項目の血液検査では何が違うのかも、あわせてご紹介します。

一般的な健康診断の血液検査でわかること

会社の定期健診や自治体の健診で行われる血液検査は、法律で定められた項目が土台になっています。貧血の検査、肝機能(AST、ALT、γ-GT)、血中脂質(LDL、HDL、中性脂肪)、そして血糖など。調べるのは、だいたい10項目前後です。

ここで大事なのは、この検査が何のためにあるのかという位置付けです。健診で見ているのは、治療が必要な病気が隠れていないか、という一点。病気を見つけるための検査ですから、基準値の中に収まっていれば「異常なし」。それで役割は十分に果たしているのです。

60項目の血液検査でわかること

まず、目的そのものが違います。見ているのは病気かどうかではなく、体の中で栄養素がどう分解され、運ばれ、使われているか、という流れ全体です。

そして、ひとつの数字を単独で見るのではなく、いくつかの数字の関係から、体の状態を読み取っていきます。もう少し具体的な例を挙げて見ていきましょう。

① 消化力は、二つの数字の関係から読む

栄養素は摂取する絶対量だけでなく、きちんと消化されているかどうかが大切です。その時に消化力を判断する指標となるもののひとつがペプシノーゲンという数字です。

胃酸が出ると、ペプシノーゲンという物質がペプシンという消化酵素に変わって、タンパク質を分解します。ですからペプシノーゲンIが低いと、そもそも胃酸があまり出ていないのではないかと考えます。理想値は50から60。あわせて、ペプシノーゲンIとIIの比(5.0以上が目安)も見ていきます。

もうひとつが、BUN(尿素窒素)です。タンパク質を分解した後に出る、いわば燃えかすのような数字です。タンパク質がしっかりと分解できていれば、ある程度の数値には上がります。

ところが、タンパク質は足りているはずなのに、BUNが低い。この組み合わせが出てきた時は、食べる量ではなく、分解する時につまずいている可能性が浮かび上がります。

ちなみに日本人は、もともと胃酸の分泌が控えめで、年齢を重ねるとさらに少なくなっていくことも知られています。

胃酸からBUNまでの流れ。実際に測っているのはペプシノーゲンとBUNの二点だけ

② ビタミンB12と葉酸は、赤血球の大きさから読む

エネルギー生成やDNAの複製に欠かせないビタミンB12や葉酸の状態を見るには、赤血球の大きさを表す MCVという項目を見ていきます。

ビタミンB12と葉酸は、細胞の設計図であるDNAをつくる時に必要になります。これらが不足すると、赤血球の核が十分に成熟しないまま、中身のほうだけが大きくなってしまい、結果として赤血球のサイズが大きくなります。

そこで、MCVが大きい時にはB12と葉酸が回っていない可能性があるという解釈ができます。

ビタミンB12と葉酸が足りないと、赤血球が大きいままつくられる

四つの所見は、ひとつにつながっていました

ここまで見てきたのは、四つのうち①の消化する力と、②のビタミンB12・葉酸です。この二つは、別々の問題ではありませんでした。

ビタミンB12を取り込むには、胃酸が必要です。食べ物に含まれるB12はタンパク質と結びついていて、胃酸がそれを切り離してはじめて、吸収できる形になります。つまり①が②を引き起こしていた可能性が高いのです。

そして胃酸の仕事は、そこで終わりません。タンパク質を分解するのも胃酸ですし、鉄や亜鉛といったミネラルも、胃酸があってはじめて吸収されやすくなります。

そう考えると、残りの二つも同じ場所につながってきます。

ミネラルの不足は、摂れていなかったのではなく、口に入れているのに、取り込めていなかった可能性があります。

甲状腺ホルモンが低めというのも同じです。その材料はアミノ酸、つまりタンパク質。さらに、T4というホルモンを体内で作用するT3という形に変えるにはセレンが必要で、亜鉛もその働きに関わっています。材料もミネラルも入り口で取り込めていなければ、数字が低めに出るのは無理のない話です。

妻に見られた四つの所見は別々の問題ではなく、胃酸の低値という根元から伸びた一本の連鎖するプロセスだったのです。

四つの所見の根元にあったのは胃酸

ですから最初にやることは、足りないものを片っ端から足すことではなく、それらを受け取る力、つまり「消化力」を立て直すことでした。

「基準値」と「理想値」の違い

ここまでが検査結果の読み方についてのお話でした。

そして実はもうひとつ、項目の数よりも大きな違いがあります。

それは、検査結果に書かれている「物差し」そのものです。

健診で行う血液検査に書かれている基準値は、健康な人の大多数が収まる幅としてつくられています。つまり、この基準値の間に数値が収まっていれば、病気ではなく問題ないと判断されます。

一方で精密栄養学では、そこに理想値というもうひとつの目盛りを重ねます。病気ではない状態ではなく、その人の体がいちばん無理なく回っている時の値。それが理想値です。当然、基準値よりも幅はずっと狭くなります。

ですから健診で「異常なし」と言われた方でも、理想値から見ると届いていない項目がいくつも出てくる。これは決して珍しいことではないのです。なかなか良くならない慢性的な不調の原因は、そこにある可能性があるのです。

健診の基準値と、精密栄養学の理想値。二本の目盛り

健診の血液検査結果でも、確かめられます

自分が受けた健診にはそんなにいろんな項目はない、と思われたかもしれません。ただ、MCVは違います。貧血の検査をすれば自動的に出てくる数字なので、健診の結果にも載っていることが多いです。

もしお手元に血液検査の結果があれば、MCVという行を探してみてください。

健診の基準範囲は、上限がだいたい99前後に引かれています(検査機関によって違います)。一方、精密栄養学で目指す理想値は88から92の間です。

思ったより狭いと感じられたかもしれません。93でも95でも健診では「異常なし」とされますが、精密栄養学の視点から見ると、B12と葉酸の状態を確かめる必要性が出てきます。

逆に88を下回っている時は、B12ではなく鉄不足を疑います。鉄はヘモグロビンの材料なので、足りないと中身を十分に詰められず、赤血球が小さくつくられるからです。

BUNも同じです。健診の基準はおおむね8から20ですが、理想値は14から17。11でも12でも「基準内」ではありますが、精密栄養学の視点では低値と判断されます。ちなみに検査によっては「BUN」ではなく「UN(尿素窒素)」と書かれていることもありますが、同じものです。

いずれにしても、これらはあくまで目安です。数値はその日の水分の状態や食事によっても左右されますし、ひとつの数字だけで何かが決まるわけでもありません。気になる場合は、自己判断なさらず医師にご相談ください。

詳細な血液検査を受ける、三つのメリット

ひとつめは、適切な対策を打ちやすくなることです。同じだるさでも、背景にあるのが鉄なのか、甲状腺なのか、消化なのかで、やるべきことがまったく変わってきます。

ふたつめは、やらなくていいことを判断できることです。世の中には健康法が無数にありますが、全部を試すことはできません。

みっつめは、行なった対策の効果を確かめられることです。食事や生活を変えた結果が、数字として返ってくる。体感だけを頼りにしていると、良くなったのか気のせいなのか、判断がつきにくいところがあります。

どれくらいの頻度で受ければいいのか

目安は、3ヶ月から半年に1回です。

1回目で、現在の状態を調べます。そこから食事や生活習慣を見直して、3ヶ月ほど経った頃に2回目を受ける。赤血球が入れ替わるのにおよそ120日かかると言われていますので、変化が数字に表れるまでには、それくらいの時間が必要になるからです。

一方で、心配だからと何度も受ければいいというものでもありません。大事なのは、受ける回数ではなく、受けたあとに何をどう変えて、それが次の数字にどう返ってきたかを見ていくことです。

まとめ

一般的な血液検査では、病気を見つけることが主な目的です。

ただ、病気ではないけれど調子が上がらないという状態は、その物差しの外側にあります。60項目の血液検査が見ているのは、体の中で栄養素がどう分解され、運ばれ、使われているか。ひとつの数字ではなく、数字どうしの関係から読み取っていきます。

そして冒頭の四つがそうだったように、バラバラに見える不調が、たどっていくと一箇所につながっていることがあります。そこがわかると、最初にやるべきことがひとつに絞りやすくなるのです。

大事なのは、検査を受けた後のご自身の行動です。

何をどう変えて、それが3ヶ月後の数字にどう返ってきたか。そこまでやってはじめて、検査は自分の役に立ちます。

まずは、お手元の健診の結果を眺めてみてください。

MCVという一項目からでも、今の自分の状態をつかむための手がかりが得られるかもしれません。

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※ この記事は、精密栄養学の考え方にもとづく一般的な情報提供であり、特定の病気を診断したり、治療の効果を約束したりするものではありません。効果や体の反応には個人差があります。本文で挙げた理想値は精密栄養学の考え方にもとづく目安であり、検査値はその日の体調や食事、水分の状態によっても変わります。ひとつの数字だけで何かが決まるものでもありません。検査を受けるかどうか、また結果の解釈や治療の必要性については、必ず医師にご相談ください。本文でご紹介したのは家族の個人的な経験であり、同じ結果をお約束するものではありません。気になる症状があるときは、自己判断なさらず、かかりつけの医療機関にご相談くださいね。