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症状で選ぶ、マグネシウムの使い分け

症状で選ぶ、マグネシウムの使い分け

ぐっすり眠れない。

不安感が消えない。

便秘がち。

最近は、こうした場面でマグネシウムに注目される方も増えてきました。

ところが、いざ買おうとすると、棚には何種類も並んでいます。

酸化マグネシウム、クエン酸マグネシウム、グリシン酸マグネシウム、L-トレオン酸マグネシウム。

値段にも、ずいぶん幅があります。

同じ「マグネシウム」と書いてあるのに、いったい何が違うのか。

結論から言うと、向いている症状が違います。

今回は、先ほど挙げた三つの症状ごとに、どの形がどう働くのかを整理していきます。

ぐっすり眠れない

こちらに向くと言われているのは、グリシン酸マグネシウム(ビスグリシネート)です。

仕組みは二段構えになっています。

ひとつは、マグネシウムそのものの働きです。脳で興奮を伝えるNMDA受容体という受け皿があり、その穴には、ふだんマグネシウムイオンが栓のようにはまっています。神経が十分に興奮したときだけ、その栓が外れる。1984年に報告されて以来、神経生理学の教科書に載り続けている仕組みで、ブレーキ役という言い方がしっくりくるかもしれません。もうひとつは、結びついている相手のグリシンです。これ自体が、体の中で興奮を鎮める側にまわるアミノ酸です。

高齢の方の不眠を対象にした3つの試験をまとめた解析では、寝つくまでの時間が平均17分ほど短くなりました。ただし総睡眠時間の改善については、有意な結果は得られていません。2025年に出た成人155人を対象にした試験でも、不眠の尺度はプラセボよりよく下がったものの、効果の大きさは「小さい」に分類される範囲で、はっきりと改善した方は3割ほどだったそうです。

ただし、誰でもすぐに「飲めば眠れる」ということではありません。それでも、寝つくまでの時間に17分の差が出るという事実は、お悩みの方にとっては決して小さくないと思います。就寝前の摂取が良いでしょう。

不安感が消えない

不安感やこわばりで考えるなら、向くとされているのはグリシン酸マグネシウム塩化マグネシウムです。

仕組みとして、ストレスとマグネシウムの間には、双方向の関係があると考えられています。

緊張が続くと、カテコールアミンと呼ばれる興奮系の物質が出ます。この時マグネシウムは細胞の外へ動き、腎臓から尿へ出ていきやすくなる。試験期間中の学生を対象にした試験で、不安の高まりと尿中マグネシウムの増加が同時に見られた、という報告もあるようです。

そして、逆向きにも働きます。カテコールアミンを分解して片づけるCOMTという酵素は、働くのにマグネシウムを必要とします。つまり、マグネシウムが足りなくなるほど、興奮を片づける働きが作用しにくくなるのです。

マグネシウムが減るから神経が張りつめ、神経が張りつめるからマグネシウムが減る。このような関係性を理解しておきましょう。

同じ綱引きは、筋肉でも起きています。縮ませるのがカルシウムなら、ゆるめる側にいるのがマグネシウム。首や肩の張り、まぶたのぴくつき、こむら返りといった症状にマグネシウムが有効とされるのは、そのためです。

便秘がち

ここだけは、考え方が逆になります。

主に使われるのは酸化マグネシウムです。

吸収率が低く、ある試験では約4%と測定されました。

全身に届けるという目的ではやや不利ですが、便通が目的なら、この「吸収されない」ことこそが働きになります。腸に残って水を引き込み、便をやわらかくする。

日本では、酸化マグネシウムは便秘薬・制酸剤として医薬品に分類されています。処方されて使っている方も多いはずです。

なお、クエン酸マグネシウムも吸収の面では酸化物より高いと報告されている一方、量が増えれば腸に水を引き込みます。便通に困っていない方が量を増やすと、まずお腹に出るのはこのためです。

長く飲み続ける場合の注意については、このあとお伝えします。

気をつける点

摂取量 日本人の食事摂取基準では、サプリメントなど通常の食品以外からのマグネシウムについて、成人で1日350mgという上限が決められています。この線が引かれている理由は、下痢です。飲みすぎると腸が吸収を抑え、水を引き込んで出してしまう。逆に言えば、下痢や軟便は「多いですよ」という体からの合図なので、量を減らすか形を変えるかの目安に使えます。なお、この350mgは食べ物以外からの数字で、通常の食事に上限は設けられていません。

摂取のタイミング 一度にまとめて摂取するより、何回かに分けたほうが、お腹への負担は軽くなります。

腎臓 マグネシウムは腎臓から出ていくミネラルなので、働きが落ちていると体に溜まります。日本では酸化マグネシウム製剤について繰り返し注意が出ており、2015年と2020年には「適正使用に関するお願い」が発出されました。高マグネシウム血症について、重い例や亡くなった例も報告されているためです。とくに注意とされているのは、長く飲み続けている方、腎臓の働きが落ちている方、ご高齢の方、便秘症の方。腎機能が正常でも、決められた量以下でも起きた例があるとされています。吐き気、立ちくらみ、脈が遅くなる、力が入りにくい、うとうとする。こうした症状が出たときは、飲むのをやめて医療機関を受診してください。

まとめ:症状から逆算する

もう一度、整理します。

ぐっすり眠れない → グリシン酸マグネシウム。就寝前におすすめ。

不安感が消えない → グリシン酸か塩化マグネシウム。

便秘がち → 酸化マグネシウム(日本では医薬品。長期の常用は主治医と要相談)

一方で、サプリに限らず、食事からの摂取も意識しましょう。ナッツ、豆、海藻、緑の濃い野菜など、ベースとしてこれが不足していると、何を足しても追いつきません。日本人のマグネシウムの1日の平均摂取量は250mgほどで、推奨量(成人男性でおおよそ330〜380mg、成人女性で270〜290mg)に届いていないのが実情です。

同じマグネシウムでも、体への届き方は違います。値段の前に、自分がいま何に困っているのかを明確にした上でマグネシウムを選びましょう。

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※ この記事は、精密栄養学の考え方にもとづく一般的な情報提供であり、特定の病気を診断したり、治療の効果を約束したりするものではありません。本文でご紹介した数値は、公的な基準や研究報告の目安であり、効果や体の反応には個人差があります。腎臓の働きが低下している方、便秘薬を長く服用されている方、抗菌薬・骨粗しょう症の薬・甲状腺ホルモンの薬を服用中の方は、マグネシウムを足す前に必ず医師や薬剤師にご相談ください。吐き気、立ちくらみ、脈が遅くなる、力が入りにくいといった症状が出た場合は、服用を中止して医療機関を受診してください。眠れない状態や不安感、便通の悩みが続く場合も、自己判断なさらず、医師などの専門家にご相談ください。