第1章 今週の一言カフェでのめまいと、カフェインの効き方
ここでは、僕が日常生活において気づいたことや注目のトピックスなどについて取り上げていきたいと思います。
さて、僕と妻はオーストラリアの東海岸で暮らして、早9年になります。
ここ数年、週末は妻とのサーフィンを楽しんでいるのですが、先週末は波が大きすぎて断念しました。
そこで気分を変えて、おいしいコーヒーを求めて車で1時間のところにあるブリスベンに行きました。
お目当ては、Coffee Anthology という、世界のベストカフェ第8位に選ばれたこともある人気店。
ここを選んだ理由は、コクや苦味のあるガツンとした味のコーヒーよりも、豆の酸味や個性などがじっくりと味わえるライトローストの豆が好きだからです。
妻はハンドドリップのメニューから Colombia Finca Zarza の Wush Wush Anaerobic Washed を試すことに。こちらはライチのような香りで、コーヒーというよりもむしろフルーツティーのような味わいでした。
僕は Colombia Cerro Azul の Geisha Hybrid Washed をチョイス。こちらはグレープのような味わいに、お茶のような独特の渋みを感じるテイスト。どちらも普段のゴールドコーストでは味わえないような、おいしいコーヒーを楽しむことができました。
気分を良くして店を出た後、街中を歩いていると、ふいに妻が軽いめまいを訴えました。
生理中ということもあって、きっとその影響かなとも思っていたのですが、よくよく振り返ってみると、カフェインに加えて、彼女がもともと持っている体質的な傾向や、血液検査で見られたマグネシウムや亜鉛の低めの値なども、関係していたのかもしれないと感じました。
実は、カフェインとエストロゲン(女性ホルモン)は、肝臓の中で同じ酵素(CYP1A2)を使って代謝されると言われています。そのため、ホルモンの状態によって、カフェインの効き方が変わることがある、と考えられています。
そして妻の場合はさらに、「カフェイン+ホルモン変動」の影響を受けやすいとされる遺伝子型(COMTなど)の傾向もあるようで、そうした要因が重なると、カフェインがいつもより長く効いて、自律神経が揺さぶられやすいと考えられています。あのめまいにも、そんな背景があったのかもしれません。
さらに、血液検査で低めだったマグネシウムや亜鉛も、体調の揺れやすさに関わっていた可能性があります。これらは体内のさまざまな酵素のはたらきを支え、神経のバランスにも関わるとされるミネラルです。
決して「コーヒーが悪い」のではなく、「今の自分の体に合うタイミングと量で飲む(またはデカフェにする)」ことができれば、同じ一杯がもっと心地よい体験になる。そんなことを教えてくれた週末の出来事でした。
第2章 今週のテーマ「毎月つらい」は、我慢する問題ではない
INNERTRAVELER.aiでは、お悩みの改善や健康増進だけにとどまらず、毎日を快適に、自分らしく創造的な日々を送るためのヒントをご提供しています。
今週は、日本でもオーストラリアでも1日の気温差が大きいようです。こんな時はどうしても、体調や気分に波が出やすくなります。
イライラや気分の落ち込みは誰にでもあるものですが、それらとうまく付き合えるようになると、体も心も軽く、快適な日々が増えていくはずです。
特に女性の場合は、ホルモンバランスの変動によって、気分や体調の波が大きくなりやすいと言われています。冒頭の妻のめまいも、その一例。本人にとっては「なぜ今日に限って」という感覚ですが、データを重ねると説明がつくことが多いのです。
今日は、女性の代表的な不調であるPMS(月経前症候群)を入り口に、この「波」の正体を見ていきます。
「毎月つらい」は、我慢する問題ではない
生理前のイライラ、感情の波、むくみ、肌荒れ。多くの女性が「ホルモンの波だから仕方ない」と受け入れてきたと思います。
しかしPMSの不調は、ホルモンの増減だけで説明できるものではありません。その裏には、腸・肝臓・神経伝達物質が絡み合った、複数の代謝のつまずきが潜んでいることがあります。
例えば、生理前のイライラに関わる仕組みのひとつとして挙げられるのが、冒頭でも触れたCOMTという酵素の「渋滞」です。この酵素はエストロゲンと興奮系の神経伝達物質の両方を分解するため、生理後半にエストロゲンが増えるとキャパシティオーバーになり、感情が揺れやすくなる、と考える見方もあります。
さらに、腸内環境が乱れると、一度無毒化されたエストロゲンが再吸収される「腸肝循環」というループも起きやすくなります。むくみや肌荒れは、腸の状態がホルモンに影響しているサインかもしれません。
僕がカウンセリングをしていて感じるのは、症状そのものより「自分でも理由がわからない」ことが、女性をより消耗させているということ。仕組みがわかるだけで、心は半分軽くなる。そんな場面を、何度も見てきました。
PMSは、性格や根性の問題ではありません。日々の食事や生活の土台を整えていくことで、付き合い方が変わっていくこともあるのです。
具体的なアクション(ビタミンB6・マグネシウムを含む食材、アブラナ科の野菜、腸内環境の整え方)や、よかれと思って摂っているものが逆効果になっているケースなど、詳しくはこちらにまとめているので、よければ見てみてくださいね。
LABO|精密栄養学の研究ノート生理前のイライラ・落ち込みと、栄養の関係記事を読む →
第3章 Q&A読者の方からのご質問
Q1集中力を高めるには、どうしたらいいですか?
集中力には意志の力よりも、神経伝達物質のバランスが大きく関わっています。
集中を支える主役は、ドーパミン(やる気)とノルアドレナリン(覚醒)。これらの材料はチロシンというアミノ酸で、卵・魚・鶏肉などに豊富です。合成にはビタミンB6・鉄・マグネシウムも必要なので、不足があると「やる気が出ない」状態になりやすいと言われます。
即効性のある工夫としては、4-7-8呼吸法(4秒吸って、7秒止めて、8秒で吐く)で副交感神経を一度整えてから作業に入ると、過剰なアドレナリンが落ち着き、ピンとした集中に切り替わりやすくなります。
僕自身はApple Watchを使ってHRV(心拍変動)を1日の中で定期的に測る習慣がありますが、HRVが高すぎたり低すぎたりする時には、無理に気合いで集中しようとせず、軽い散歩や筋トレ、呼吸法や、その時の気分に合わせた音楽を使って、穏やかに集中力を高めていきます。「集中できない」のは怠けではなく、神経のコンディションのサインなのです。
Q1血糖値のコントロールは、なぜ大事なんですか?
血糖値の乱高下は、疲労・眠気・気分の波・老化のすべてに関わってくるからです。
僕自身、食後の血糖を意識するようになってから、食後の眠気が消え、午後のだるさがなくなり、イライラの波も落ち着きました。さらに、食事全体を整えることは、糖化(AGEs)の負担をやわらげ、肌や血管のコンディションを保つうえでも役立つと考えられています。
具体的には、摂取する糖質の質と量を意識する、食事の順番を「野菜→たんぱく質→炭水化物」にする、食後10分の散歩や軽い運動、精製された砂糖を控えるなど。これだけでも、体感は大きく変わるはずです。
自分の体がどう反応しているかを知りたい方は、持続血糖測定デバイス(CGM)のような仕組みを取り入れてみるのも一つの方法です。こうした機器は医療機器にあたるものもあるため、使う際は取扱いの説明や医療機関の案内にしたがってくださいね。同じ食事でも人によって反応が違うことが、データで見えてくることがあります。「なんとなく不調」を「説明できる不調」に近づける、心強い手がかりになるかもしれません。
Q1血液検査や遺伝子検査で、何がわかるんですか?
シンプルに言うと、遺伝子検査はあなた自身の「設計図」、血液検査は「現在地」を示すものです。
同じものを食べても太りやすい人と痩せやすい人がいる。コーヒーで眠れなくなる人と、平気な人がいる。こうした違いには、遺伝子が関わっていると考えられています。
ただし、遺伝子はあくまで設計図であり、実際にどう発現するかは、後天的な環境や栄養が大きく左右すると考えられています。その鍵を握るのがメチレーションという仕組みで、例えば葉酸やビタミンB12などを含む食事を意識することが、こうした体の調整に関わってくると考えられています。栄養は、生まれ持った設計図とのつきあい方を整えるための、身近な手がかりのひとつなのです。
僕自身は、遺伝子を知ることは、食事や神経的な特性、ライフスタイルなど、日々の選択を考える手がかりのひとつになると考えています。理解しておいて損はないですし、早めに知っておくことで、日々の選択や決断の参考にしやすくなると感じています。