第1章 今週の一言なくしたAirPodsと、四つの視点で見る自分
ここではHSS型HSP(刺激を求めつつ、繊細に感じ取る気質をあわせ持つタイプ)の傾向を持つ筆者が、「常に新たな刺激を求める傾向」と「ストレスや過剰な刺激に疲弊しがち」という相反する気質を持つ自分とどのように向き合い、快適な暮らしとさらなる創造性を実現しようとしているのか、その旅路をリポートしています。
皆さんは、ひとつのことが気になり出すと、なかなか切り替えられなくなることはありませんか?
それとも、気持ちの切り替えは早いほうでしょうか。
実は先日、AirPods Proを片耳なくしてしまいました。
毎朝の散歩の途中に、このメルマガの下書きを音声で吹き込んでいるので、これがないとなかなかに不便です。
iPhoneのアプリで最後にあった場所は追えるのですが、その記録のあたりを何度歩いても見つかりません。
そろそろ出かけないと、朝の仕事に間に合わない。
そう分かっていても、僕の頭はずっと、この片方のイヤホンに引きずられたままでした。
もしかしたら、あそこかもしれない。
いや、こっちだったかもしれない。
延々と、探し続けてしまうのです。
これもきっと、僕という人間のひとつの特性なのだと思います。
先日のnoteの記事では、僕の体質をアーユルヴェーダの視点から眺めると「ヴァータ」にあたるというお話をしました。
ヴァータは、風と空という要素を持つエネルギーです。
動きが多く、変化が速く、思考もよく巡ります。
その一方で、消化の力が不安定になりやすいとも言われます。
ここでいう消化は、食べたものだけの話ではありません。
アーユルヴェーダでは、出来事や感情も、同じように消化するものとして扱います。
一つの出来事に思考や感情がとらわれてしまいがちな僕のこの癖は、このヴァータという体質と重なって見えます。
さて、ここからはまったく違う角度の話です。
遺伝子検査で見ると、僕はCOMTという遺伝子がMet/Met型でした。
COMTは、ドーパミンなどを分解する酵素の設計図にあたります。
Met/Met型はその働きがゆっくりで、放り出されたドーパミンが脳の中にとどまりやすいと考えられています。
集中したい場面では、それが強みになります。
その代わり、興奮や刺激も頭に残りやすく、プレッシャーのかかる状況では揺らぎやすい傾向がある、とも言われています。
研究の世界では、この型の違いを「戦士型(warrior)」と「思索型(worrier)」といった呼び方で語ることもあるようです。
もちろん、遺伝子ひとつで人の性質が決まるわけではありません。
あくまで、傾向のひとつです。
血液検査を眺めると、また別の景色が見えてきます。
僕は、鉄の貯蔵を示すフェリチンという値が、慢性的に高めです。直近で400 ng/mL。
精密栄養学で目安とされるのは50〜80 ng/mLあたりですから、かなり離れたところにいます。
ただ、この数字は鉄の量だけでなく、体のどこかで炎症が続いている時にも上がります。
白血球の内訳を見ると、単球(6.9%)という細胞も高めに出ます。
こちらも、火種が長く残っている時に動きやすい数値のひとつです。
同じように高く出る好酸球(2.8%)という項目もありますが、これはストレスというよりアレルギーや腸の免疫の反応を映していることが多いと言われます。
同じ「高い」でも、そこから読み取れることは、それぞれ違うのです。
次に、Apple Watchです。
締め切りのある仕事や、プレッシャーのかかる場面が続く時期、僕のHRV(心拍変動)は10台まで落ち込むことも多く、その状態がしばらく続きます。
ここからも、交感神経優位の側にぐっと針が振れているのがわかります。
伝統医学から見た体質、遺伝子、血液、そしてウェアラブル。
どれかひとつだけなら、ただのデータの断片です。
ところがそれら四つを重ねてみると、考えが巡りやすく、刺激が残りやすく、それが体にも表れやすい人。
そんな輪郭が、立体的に浮かび上がってきます。
輪郭が見えてくると、打ち手も見えてきます。
ヴァータには、規則正しさと温かさと油分を。
COMTには、刺激を入れる量とタイミングの調整を。
炎症には、食事と腸内環境を意識して。
自律神経には、ゆっくりとした呼吸と外を歩く時間を。
入り口が四つあるということは、アプローチする方法が増えるということでもあります。
誰しも、調子の落ちる時期は必ずやってきます。
そこで自己嫌悪に転がり落ちてしまわないよう、調子の戻し方をあらかじめ用意しておく。
これは思っている以上に、大きな支えになります。
さて、あなたはご自身のことを、どれくらい理解されているでしょうか。
健康管理という言葉は、病気にならないことだけを指すものではないと思います。
健やかな心と体を保ち、常に穏やかな幸福感に包まれて、毎日を楽しく過ごすこと。
このような統合的なアプローチで、あなた自身への理解を一緒に深めていきましょう。
第2章 今週のテーマ生まれ持った体質と、いまの状態。そのふたつの差を読む
INNERTRAVELER.aiでは、お悩みの改善や健康増進だけにとどまらず、毎日を快適に、自分らしく創造的な日々を送るためのヒントを精密栄養学の視点からご提供しています。
生まれ持った体質と、いまの状態。そのふたつの差を読む
第1章で、「体質」という言葉を何度か使いました。
そもそも精密栄養学とは、血液検査のデータや遺伝子など、その人の体質や特性に合わせて、食事とライフスタイルを整えていくアプローチです。
土台にあるのは西洋医学の視点ですが、そこに東洋医学や漢方、アーユルヴェーダ、そして最新のテクノロジーから得られる知見を重ねていきます。
その中でもアーユルヴェーダには、この「体質」をふたつに分けて考える、面白い枠組みがあります。
ひとつはプラクリティ。
生を受けた時に決まると考えられている、その人が生まれ持った設計のことです。
もうひとつはヴィクリティ。
季節や食事、仕事や人間関係の影響を受けて日々動いている、今この瞬間の状態を指します。
そして、このふたつの間に開いた距離こそが不調のもとになると、アーユルヴェーダでは考えます。
僕がこの考え方に惹かれているのは、目指す先が誰かの理想像ではないところです。
目指すべきは、本来の自分。
風の性質の強いヴァータ体質の人が、無理やり穏やかなカパ体質を目指そうとしなくてもいいのです。
つまり、正解を探し求めるのではなく、本来の自分に戻っていくこと、それが健やかな体と精神を作るとされています。
誰かへの憧れよりも、まだ見ぬ自分との新たな出会いを追い求める。
それこそが、僕がINNERTRAVELER.aiで掲げているコンセプトでもあります。
今回のLABOでは、プラクリティとヴィクリティの見分け方と、開いてしまった差を縮めるための日々の整え方を、精密栄養学の視点も交えてご紹介しています。
LABO:プラクリティとヴィクリティ|本来の自分と、いまの自分の距離
LABO|精密栄養学の研究ノートプラクリティとヴィクリティ|本来の自分と、いまの自分の距離記事を読む →
ご自身のタイプが気になる方は、こちらの簡単なチェックもどうぞ。
アーユルヴェーダ体質チェック(無料)
第3章 Q&A読者の方からのご質問
Q140代の夫が、家でいつもだらだらしているのが気になります。移住や副業など新しいことにも挑戦してほしいのですが、なかなか腰が重いようです。どうしたらいいでしょうか?
Aご質問ありがとうございます。
まず、ひとつだけ、心の隅に置いていただきたいことがあります。
「どうにかしたい」という想いは、ご主人ではなく、あなたご自身の願望です。
そして「だらだらしている」というのも、あなたの価値観から眺めた時の、ひとつの見え方にすぎないということです。
もしかしたらご主人は、その時間を何より心地よく過ごされているのかもしれません。
その上で、今回はアーユルヴェーダの視点から眺めてみましょう。
断定はできませんが、ご主人はカパの要素が強い方なのかもしれません。
カパは、水と地の要素を持つエネルギーです。
僕のヴァータのように新しい刺激を追いかけるよりも、安定していること、変わらずそこにあることに、満足や幸福を感じやすいタイプだと言われています。
もともとそういう気質の方に、急にギアを上げてもらおうとしても、なかなかうまくいきません。
ただ、カパの特徴のひとつに「重さ」があります。
動かずにいると、停滞しやすい。
ですから、どの体質とも同じように、バランスを取ることは大切です。
そこで、無理のない範囲で、ご主人のペースに合わせた刺激を、少しだけ足してみるのはいかがでしょうか。
朝、少し早く起きて、2人で一緒に外を散歩してみる。
行ったことのない場所へ、休みの日に出かけてみる。
そんな具合に、少しだけ「動く」要素を、一緒になって足してみることだけでも、ご主人にとっては停滞を打破し、バランスを取れるようになっていけるかもしれません。
食事の面では、カパは食べたものが身になりやすいと言われています。
重いものを軽いものに置き換えたり、甘いものや糖質を少し控えめにしたりするのも、方向としては合っています。
面白いのは、こうした話は、説得よりも共有のほうが進みやすいことです。
あなたを変えたい、ではなく、どうやら私たちは体質が違うらしい。
その相互理解の上で、ご自身の想いを率直に伝えてみるのはいかがでしょうか。
私も結婚して早18年が過ぎます。
昔は何かと激しく喧嘩もしたものですが、アーユルヴェーダや遺伝子を学んだおかげ(?)で、以前よりはずっと平和な日々が続いております(笑)
お互いの感情や思考、そして日々の行動の傾向は、あくまでもこうした個人の特性の上に起こる自然な反応だと理解できれば、納得いかないことや思うように進まないことも、「ま、こういうものだよね」と、一呼吸置けるようになるかもしれません。
その上で、お互いに異なる夫婦が一緒に力を合わせることで、1人では見えなかった景色にきっと結びつくことでしょう!
Q1暑さで食欲がありません。冷たい麺やアイスばかりになってしまうのですが、大丈夫でしょうか。
A年々、暑さが厳しくなるにつれ、体調や食事の管理も難しくなりますよね。
まず、食欲が落ちること自体は、体としては自然な反応です。
暑いと、体は熱を逃がそうとして、血液を循環させます。
その分、胃腸に回る血液が減るので、消化力も自然と落ちがちです。
第1章で、アーユルヴェーダでは出来事や感情も消化するものとして扱う、というお話をしました。
その大元にあるのが、消化の火という考え方です。
夏は、この火がもともと弱くなる季節だとされています。
そこへ冷たいものを入れると、火はさらに小さくなります。
ここで気をつけたいのが、たんぱく質です。
そうめん、冷やし中華、アイス、パン。
食欲のない時に手が伸びるものは、たいてい糖質に偏っています。
重要なのは、たんぱく質が不足している状態が数週間続いても、その影響は夏のうちには出てこないことがある、ということです。
夏の盛りが過ぎ、涼しくなってきた頃に、だるさや肌の乱れとして、遅れて顔を出すことがあります。
夏バテだと思っていたものが、実は秋になって効いてくることもあるのです。
もうひとつは、水分と塩分です。
汗で失われるもののうち、量がいちばん多いのはナトリウム、つまり塩分です。
水や麦茶だけをたくさん飲むと、薄まる方向に傾いて、かえってだるさが出ることがあります。
では、どうすればいいのでしょうか?
三つ、挙げてみます。
ひとつめ。
なるべく常温の水分を摂ること。
氷を入れないだけでも、胃腸の負担はずいぶん変わります。
ふたつめ。
冷たいものは、食事と時間をずらすこと。
食事中に冷たい飲みものを流し込むと、消化の火をいちばん必要な場面で冷やしてしまいます。
みっつめ。
たんぱく質は、消化しやすい形で摂ること。
冷奴、卵、白身魚、しらす。
お肉をがっつり摂るのはなかなか難しい季節ですから、量よりも消化のしやすさで選んでみてください。
また、食前に少し酸味を添えるのも、昔ながらの理に適ったアイディアです。
レモン水や梅干し、酢のものなどでも構いません。
これにより消化液が出やすくなると言われていて、前回お話ししたアップルサイダービネガーも、同じ考え方から有効です。
その上で、どうしても食欲のない日はそうめんだけでもいいと思います。
夏に食欲が落ちるのは、体がきちんと季節に反応している証拠でもあります。
全部を一度に整えようとせず、たんぱく質と、飲みものの温度。
まずはこの二つを気にかけていただけたら、秋になってから体がずいぶんと楽になるはずです。
ただ、食欲がないまま体重が落ちてきた、水もあまり飲めないといった時は、夏バテという言葉で片づけずに、早めに医療機関へご相談されることもご検討ください。
Q1具体的に、どのようなサービスが受けられるのですか。何事も続かない自分なので、迷っています。
Aお問い合わせ、ありがとうございます。
大きく分けると、三つです。
解析レポートのご提供。
オンラインでのカウンセリング。
そして、メールでのフォローアップ。
土台になるのは、血液検査のデータです。
そこに、可能な範囲で、日々のお食事の記録や、スマートウォッチ・スマートフォンから取れる運動と睡眠のデータを重ねていきます。
さらにご興味のある方は、遺伝子検査、腸内環境の検査、血糖値の測定、そして今回お話ししたアーユルヴェーダの体質や神経特性のプロファイルまで、幅広い視点を統合して、ご自身の体調やライフスタイルを整えるためのヒントを一緒に探していきます。
ただし、あくまでも病気の診断や治療を行うものではありません。
個人的には、30代から50代の方に、特に向いていると感じています。
以前と体が変わってきた。子育てや仕事で、生活のリズムそのものが変わった。そんな変化のただ中にいらっしゃる方です。
本来の自分と、いまの自分。
その差がどれくらい開いているのかを正確に見定め、対処法を持っておくこと。
それは、この先の数十年という長さで眺めた時に、健康だけでなく、人生の充実の度合いに大きな違いになると考えています。
痩せたい、だるさを取りたい、肌を整えたい。
こうした目に見える部分のご相談も多くいただきます。
ただ、やる気が出ない、不安が抜けない、ホルモンのバランスが気になるといった、目に見えにくいお悩みについても、食事とライフスタイルの側からお役に立てることがあります。
でも、どうしたらいいのかわかっていても、なかなか行動できない。
そんな方には、体質や状態を踏まえて、ご希望の頻度(毎日 or 週一)と時刻にお送りしている短いフォローアップメールもきっと役に立つはずです。
続けることを、ひとりで背負わずに済むように、という仕組みです。
僕自身、メンターと仰ぐ方から受ける刺激が、いつも自分を支えています。
気分や体調、そして自分の成長や運の巡り合わせなど、あらゆるものには波があります。
いい時も悪い時も、過剰に反応しすぎず、凛とした態度で日々と向き合うことが大切だと僕は考えています。
そのためにも、頭で考えても解決できないお悩みには体から、体の悩みは頭で一度冷静に整理してから、適切なアプローチをすることが大切です。
自分はこんな人だからと、無用な「ラベル」を自ら貼るのはやめて、エネルギーとハッピー感溢れる本来の自分に戻りましょう!
結び
最後に、探しものの話に戻ります。
AirPods、見つかりました。
ただ、面白いもので、見つかった瞬間よりも、探し回っていたあの朝のほうが、記憶に残っています。
自分の頭が、ひとつのことにどれだけ引っぱられるのか。
それと改めて向き合った出来事でした。
気になり出すと探し続けてしまう性分は、きっとこの先も変わらないのだと思います。
だとすれば、変えるべきは性分ではなく、そんな自分に瞬時に気づいて、バランスをとれるようになることでしょうね。
