第1章 今週の一言妻と僕が精密栄養学にたどり着くまで
ここでは、オーストラリアの日常における気づきや、健康関連で注目のトピックスなどについて取り上げていきます。
僕は、結婚して18年になる妻と二人で、オーストラリアで暮らしています。
元々は東京や鎌倉、茅ヶ崎などで暮らしていたのですが、30代半ばで仕事やプライベートを一度リセットしたくなり、かねてからの憧れでもあった海外の海辺での生活を実現するために、2017年にオーストラリアの東海岸へ移住しました。
とはいえ、現地での仕事も、知り合いも、十分な英語力もないところからのドタバタなスタート。最初の数年は、本当に手探り状態でした。
仕事は現地のサーフショップの販売スタッフ、ウェブデザイン、ライター、オンライン講座の講師、マーケティングなど、自分にできることは何でもやってきました。
妻も現地で保育士の資格を取り、お互いに少しずつ仕事も軌道に乗り、友人も増え、新しい土地での暮らしを少しずつ築いていくことができました。
最近では、妻とは毎週末に一緒にサーフィンを楽しんだり、おいしいコーヒーを求めてあちこちのお店を開拓したりしています。
そんな僕たちですが、30代の後半の時期に子どもを授かりたいと考えていた時期がありました。
なかなかうまくいかず、病院に通い、情報を調べ、「こうすれば授かれる」という方法を色々と試してみましたが妊娠には至りません。その過程で、お互いに気持ちがすれ違い、ぶつかることも少なくありませんでした。
数年間の試行錯誤の末、僕たちは不妊治療に挑むことを決めました。ホルモン剤や注射、定期的な通院、そして心理的な不安やプレッシャーを抱えながら、体外受精にも3回挑戦しましたが、結果は実りませんでした。それでも、「やれるだけのことはやった」と、自分たちを納得させることはできたと思っています。
大人になると、経済的にも立場的にも、できることは少しずつ増えていきます。その一方で、どうしても得られないものや、できないことも、同じように増えていきます。人それぞれの人生は、こうして枝分かれしていくのだなと、しみじみと感じさせられた経験でした。
そうして40代に入り、僕は精密栄養学に出会います。
もともと、自分自身や人に対する好奇心は強いほうでした。そこに、「どうして子どもを授かれなかったのだろう」という問いや、妻の慢性的な体調不良、そして「自分はどうしてこういう矛盾した性格(内向的且つ外向的)で、こういう体質(太りづらい)なのだろう」という疑問が重なって、精密栄養学にたどり着いたのは、振り返るととても自然な流れだったように思います。
妻の不調に対しては、知り得る限りのことは試してきました。西洋医学に東洋医学、さまざまな療法や検査と、挙げればきりがありません。
そうやって調べていくうちに、僕と妻には、よく似たところもあれば、まるで正反対のところもたくさんあることが分かってきました。
たとえば、ストレスの感じ方に関わる「COMT」という遺伝子があります。COMTは、やる気や興奮に関わるドーパミンという物質を分解し、その量を調整する酵素の設計図のようなものです。この働きが速い人もいれば、ゆっくりな人もいます。
妻は、この働きが速いタイプです。ドーパミンをてきぱきと処理していくので、楽しいことがあっても、嫌なことがあっても、その反応をあまり後に引きずりません。
一方の僕は、この働きがゆっくりなタイプです。いったん感じたストレスや感情が、長く残りやすいのです。よく言えば感受性が高く、別の見方をすればストレスに弱い、という傾向があります。
もちろん、遺伝子がすべてを決めるわけではありません。同じ遺伝子でも、生活環境や経験によって反応の仕方は変わりますし、あくまでひとつの傾向にすぎません。それでも、「自分はこういうクセを持っているんだ」と知っておくだけで、ずいぶん気持ちが楽になります。
僕たちは仲がいいねと言われますが、実はよく喧嘩もします。僕がもやもやを引きずってしまうのも、こうした体質が影響している部分があるのだと、今では思えるようになりました。相手を責める前に、「これはお互いの体質の違いなんだ」と一歩引いて見られると、関係はずっとおだやかになります。
自分の体質や傾向を理解することは、自分のためだけでなく、近しい人との関係を深めることにもつながる。最近、それを実感しています。
4月に受けた全ゲノムの遺伝子検査の結果が、あと1か月ほどで届く予定です。そこからまた、どんな発見があるのか。今からとても楽しみにしています。
第2章 今週のテーマ午後の眠気は、肝臓からのサイン?
INNERTRAVELER.aiでは、お悩みの改善や健康増進だけにとどまらず、毎日を快適に、自分らしく創造的な日々を送るためのヒントをご提供しています。
「午後の眠気は、肝臓からのサイン?」
午後になると、眠気で集中が切れる。昼食の後は、つい甘いものに手が伸びる。お酒を飲んだわけでもないのに、頭がぼんやりして体が重い。それでも健診では、「おおむね正常」と言われる。
そんな不調を、年齢や寝不足のせいにして、やり過ごしてきた方も多いのではないでしょうか。
前回は血糖値のお話をしましたが、その血糖を陰で支えている臓器があります。それは、体の中でいちばん大きな臓器、肝臓です。
肝臓は「お酒を処理する場所」と思われがちですが、実はもっと幅広い仕事をしています。なかでも見過ごせないのが、血糖の調整です。
肝臓は、食後に余った糖をいったんため込み、おなかが空くと少しずつ放出して、血糖を一定に保ってくれます。「貯めて、放出する」ダムのような働きです。この調整が追いつかなくなると、食後に血糖が急に上がって急に下がる「乱高下」が起こり、どっと眠くなったり、午後に集中が切れたりすることがあります。
やっかいなのは、肝臓にはほとんど痛みを感じる神経がないことです。これが「沈黙の臓器」と呼ばれるゆえんで、かなり無理がかかっても、なかなか不調として現れません。代わりに、食後の眠気や午後の集中力の低下、気分の波といった、一見肝臓とは関係なさそうな形で現れてくることがあると考えられています。
健康診断で目にするAST・ALTといった肝臓に関する数値が正常でも、安心とは限りません。これらは「どれくらい肝細胞が傷ついているか」を示す指標で、ダムとしての“余力”までは教えてくれないからです。そして、過剰な糖質の摂取は、お酒を飲まない人でも脂肪肝につながることが分かっています。お酒を控えている方ほど、見直したいのは糖質の量です。
できることは、とてもシンプルです。朝をご飯やパンなどの糖質だけで済ませない、ジュースなど液体の糖を見直す、食後に少しだけ体を動かす。そんな小さな取り組みで、ダムの負担はずいぶんと軽くなるはずです。
尚、ここでお話しをした内容はあくまでも一般的な体の仕組みであり、気になる症状や検査の数値がある時は、自己判断なさらず医療機関にご相談されることをお勧めいたします。
午後の眠気と肝臓の隠れた関係、そして今日からできる工夫について、詳しくはこちらにまとめましたので、よろしければご覧ください。
LABO|精密栄養学の研究ノート肝臓は食事の間の血糖をどう保っている?午後のだるさとの関係記事を読む →
第3章 Q&A読者の方からのご質問
Q1フリースタイルリブレ(リアルタイム血糖値モニター)を着けてみたら、低血糖を起こしていることが分かったのですが、どうしたらいいでしょうか?
Aリブレのようなデバイスを着けて、はじめて自分が「低血糖だった」と知ると、不安になってしまうお気持ちはよくわかります。事実、僕や妻にもそのような経験があります。
まず、食後に起こる「反応性低血糖」とは、空腹時に摂取した糖質(パンや甘い飲み物など)により血糖が一気に上がり、それを下げようとするインスリンが大量に分泌され、結果的に血糖値が下がりすぎてしまう状態です。だるさやふらつき、動悸などの体感が現れることがあります。
これらを防ぐためには、食事の際にはたんぱく質・良質な脂質・食物繊維を組み合わせて摂取する、精製された糖を減らす、野菜やたんぱく質を糖質よりも先に食べる、食事の間隔を空けすぎない、お酒を飲むなら食べ物と一緒に、またカフェインもほどほどにするなどが挙げられます。
それでもなかなか血糖値が安定しないという場合は、補食としてボーンブロススープやMCTオイルなどで、糖の代わりのエネルギー源を予防的に補ってあげるのも良いと思います。
とはいえ、何にどれだけ反応するかは、人によって本当にさまざまです。だからこそリブレは、「自分の身体を理解するためのツール」として役立つはずです。一般論を鵜呑みにせず、ご自身のデータと体感を照らし合わせていく、それが精密栄養学の大切な考え方です。
また、インスリンや血糖を下げるお薬を使っている方、手の震えや冷や汗、頭がぼんやりするといった症状をくり返す場合は、必ず医師にもご相談ください。
Q1サービスに興味があるのですが、初期設定が難しそうで、続けられるか不安です。
Aモニターにご参加頂いている方々から貴重なフィードバックを頂戴しており、現在、システムの改良を進めております!ご希望の場合は、僕がオンラインで直接ご案内をさせて頂きますので、ご遠慮なくお申し付けください。
データの記録は、お食事をはじめ、運動や睡眠などのヘルスケアデータをお願いしており、これらがあると解析の質がグッと深まりますが、必須ではございません。あくまでも皆さまお一人お一人のライフスタイルに併せて、できることからご一緒にサポートをさせていただければと考えています。
とはいえ、AIを活用する解析レポートのご提供には、質の高いインプットが重要です。これを機会に、ご自身の日々のお食事、運動、睡眠、さらには気分や体感、HRVなど、様々なデータを取得し、蓄積することが中長期的に自分への理解を深めていくことになるのは間違いありません。新しい時代の新しいテクノロジーの恩恵を、ぜひ一緒に享受しましょう!
Q1健康診断で「肝臓の数値が高い」と言われました。お酒はあまり飲まないのに、なぜでしょうか?
Aお酒をほとんど飲まないのに肝臓の数値が高い。意外に思われるかもしれませんが、これは決してめずらしいことではありません。
第2章でも触れたとおり、肝臓はお酒だけでなく、糖や脂質の代謝など、とても幅広い仕事をしています。そのため、お酒以外の要因、たとえば体脂肪のつき方や、血糖・中性脂肪のバランスなどが、数値に影響することがあります。いわゆる脂肪肝も、その代表的なものです。
実は、お酒をあまり飲まない方の脂肪肝(非アルコール性脂肪肝)には、大きく分けて2つのパターンがあります。ひとつは「とりすぎ・代謝の乱れ」によるもの。もうひとつは、意外に思われるかもしれませんが「栄養不足(無理なダイエット)」によるものです。
一つめは、糖質や脂質のとりすぎ、運動不足、内臓脂肪の蓄積などが重なるタイプです。こうした状態が続くと、インスリンというホルモンが効きにくくなり(インスリン抵抗性)、糖や脂質の代謝が乱れて、肝臓に脂肪がたまりやすくなります。もともとの体質(遺伝的な要因)が関わることもあります。
二つめが、見落とされやすい落とし穴です。「太ってもいないし、運動もしているのに」という痩せ型の方でも、脂肪肝になることがあります。肝臓は、生成された中性脂肪を体のあちこちへ送り出していますが、その“運び屋”はタンパク質からつくられます。極端な糖質制限や無理なダイエットでタンパク質が不足すると、この運び屋が足りなくなり、脂肪を送り出せないまま肝臓にためこんでしまうと考えられています。スリムな体型だから安心、とは言いきれないのです。
とはいえ、どちらの場合も一つの数値だけで決めつけないことが大切です。ALTやγ-GTPといった値は、その日の体調や前後の食事、運動でも動きます。健診で数値を指摘された時は、まず医療機関で原因を確かめてもらってください。
改善のポイントは、カロリーを減らすことや運動だけではありません。極端なダイエットは避けて、タンパク質をしっかり摂り、肝臓の代謝がきちんと回る状態を保つこと。これが、どちらのタイプにも共通する土台になる可能性があります。
