第1章 今週の一言冬のサーフィンと自律神経、HRVで見えるもの
ここでは、オーストラリアの日常における気づきや、健康関連で注目のトピックスなどについて取り上げていきます。
疲れがなかなか抜けない、夜ぐっすり眠れない、気分にムラが出る。その背景に、自律神経の揺らぎが隠れていることがあります。今回は、これまで目に見えなかったその状態を、どうやって手元に手繰り寄せていくかについてお話しします。
六月も半ばを過ぎ、オーストラリアはすっかり冬の気候になってきました。
僕の暮らすゴールドコーストは、この国の中では比較的あたたかいエリアです。それでも冬の朝は、気温が10℃を下回る日も出てきました。
しかもこちらの住宅は、日本のように断熱がしっかり効いていません。なので、表示されている気温以上に、朝晩の冷え込みを身体で感じます。
週末は妻と共によくサーフィンを楽しむのですが、冬用のウェットスーツを着ていても、さすがに2時間以上海に入っていると、冷たい風が身に染みます。。(でも、たまに水着だけのオージーも少なくない。)
実はこの気温の変化に、私たちの身体が密接に関わっています。
それは、自律神経です。
私たちの身体には、活動的になる時に働く交感神経と、リラックスする時に働く副交感神経があります。車に例えるなら、アクセルとブレーキのようなもの。状況に応じてこのバランスを自動で保ってくれる仕組みが、もともと備わっています。
ところが現代では、このバランスが狂ってしまうことがあります。過剰な刺激、慢性的なストレス、乱れた食生活など、原因は本当にさまざまです。
日本ではこれから夏に向けて気温が上がる一方、室内はエアコンで肌寒いほど。蒸し暑い屋外との寒暖差を行き来するうちに、自律神経は知らない間に消耗していきます。薄手の羽織りものを持ち歩く、冷たい飲み物を摂りすぎない、湯船に浸かるなど、ちょっとした工夫で乱れはずいぶん和らげることができます。
この自律神経のバランスが崩れると、疲れが抜けない、夜ぐっすり眠れない、気分にムラが出る、集中力が続かない、ホルモンバランスが乱れるなど、様々な影響が出てくることがあります。
これまで、自律神経の状態は目に見えないものでした。なんとなく不調を感じていても、それを裏付けるデータがなかったのです。
しかし近年は、スマートウォッチやスマートフォンなどのおかげで、その一端を可視化できるようになってきました。その代表的な指標のひとつが、HRV(心拍の揺らぎ)です。
HRVとは、心臓が打つ一拍ごとの間隔に生まれる、ごくわずかな「ゆらぎ」のこと。このゆらぎ具合が、自律神経のバランスや回復力を映す手がかりになります。
継続してモニタリングをしていると、自分がしっかりと休めているか、ストレスから回復できているか、必要な時に集中ややる気を発揮できそうか、といったことが少しずつ見えてきます。
僕自身、Apple Watchのおかげで睡眠中はもちろん、サーフィンをしている最中も含めて、24時間365日HRVをモニタリングしています。その時々のエネルギーや気分、体調と照らし合わせていくうちに、「どうすれば睡眠が深くなるか」「やる気が出ない時、どうすれば気持ちを上げられるか」「自分がどれくらいのストレスを感じているのか」といったことが、だんだん自分なりに分かってきました。
数値が自分を理解する手がかりになっていく、そんな感覚です。
ただし、全員がスマートウォッチを使用しているわけではありません。また、四六時中身に着けることに煩わしさを覚える方も少なくないはずです。
そこでもっと手軽に、スマートフォンのカメラに人差し指を当てるだけでHRVを測定できるアプリを、現在開発中です。市販のそうした機能を持つアプリもありますが、自分に必要なものはなるべく自分で、自分が使いやすいようなものを作ることに最近は取り組んでいます。精度を上げて、できるだけ使いやすいものにするため、何度もレビューを重ねていますが、完成したらご案内させてください。
目に見えなかった自律神経の状態を、こうして少しずつ手元に手繰り寄せていく。それが、自分の心と身体をいたわる第一歩になると、僕は考えています。
第2章 今週のテーマ血糖値との賢い付き合い方
INNERTRAVELER.aiでは、お悩みの改善や健康増進だけにとどまらず、毎日を快適に、自分らしく創造的な日々を送るためのヒントをご提供しています。
「血糖値との賢い付き合い方」
INNERTRAVELER.aiをご利用くださる方の多くは、30代から50代の方々です。
この時期に大切にしたいことのひとつが、血糖値のコントロールだと僕は思っています。
そもそも血糖値とは、血液の中にどれくらいブドウ糖(糖の一種)が溶けているか、その濃度のことです。
ご飯やパンなどの炭水化物を食べると、消化されてブドウ糖になり、血液に入って血糖値が上がります。
通常は、糖質が入ってくるとインスリンというホルモンが分泌され、栄養素が身体に蓄えられた後、血糖値は速やかに下がっていきます。供給された糖を、インスリンが回収してくれるようなイメージです。
ところが、糖質の摂りすぎが続いたり、身体の中に炎症があったり、あるいは遺伝子の特性が関わっていたりすると、このインスリンの効きが悪くなってくることがあります。これが、いわゆる「インスリン抵抗性」と呼ばれる状態です。
そしてこのインスリン抵抗性は、生活習慣病の入口のひとつにもなります。よく耳にする言葉ですが、とはいえなかなかピンと来ないという方も少なくないかもしれません。
もう少し身近なところで言うと、たとえば「食後に眠くなる」という感覚。
これを「人間の摂理だから仕方ない」と感じている方も少なくありません。たしかに、食事のあとは身体がリラックスモードに切り替わるので、自然と眠くなる面もあります。
ただその一方で、血糖値が急に上がって急に下がる「スパイク」が起きていると、エネルギーが不安定になってしまい、ランチのあとに眠い、頭が働かない、疲れがどっと出る、といったことも起こり得ます。
そこで、第1章でお話しした自律神経と同じように、ここでも大切なのは「可視化」です。
自分の血糖値が一日の中でどう変化していて、それがどんな体感を伴っているのか。それを知ることが、最初の一歩になります。
ここからは僕個人の体質に基づく話で、すべての方に当てはまる方法ではありません。持病があったり、お薬を使っている方は、自己判断せず主治医にご相談ください。
僕自身は、糖質を控える食生活を続けて数年になります。たまに糖質も食べますが、平日はほとんど摂りません。
フリースタイルリブレという、腕にセンサーを着けてスマートフォンで数値をモニタリングできる機器を定期的に使っているのですが、一日を通しておおむね80mg/dL前後で安定していて、大きなスパイクはほとんど見られませんでした(これは僕個人の測定例です)。
ただ、僕には僕なりの課題もあります。身体は糖質が足りない時、蓄えた脂肪を分解して、そこからできる脂肪酸やケトン体をエネルギーに変えます。ところが僕は血液検査で、その「中性脂肪」の値がもともと低めということがわかっています。
その状態で強いストレスがかかったり、コルチゾールやアドレナリンが出て急にエネルギーが必要になると、肝臓に貯蔵されていた糖が放出されたり、身体が新しく糖を作り出したりして、過剰な糖質を取ったわけでは無いのに、血糖値スパイクのような状況が起こるのではないか、と僕は推測しています。
つまり、食事をいくら整えても、ストレスの影響で血糖が揺れることがある、ということを実感できました。
ここから言えるのは、血糖値のコントロールは、まずは食事の管理が土台であり、さらにストレスマネジメントも含めた自分に合ったライフスタイルを送ることが大切ということです。
精密栄養学の観点から、または僕個人のこうした経験から、ストレスとのつき合い方や、自分自身の遺伝的な特性を理解しておくことも、同じくらい大切だと感じています。
なぜ「糖質を減らすだけ」では充分ではないのか、良かれと思っている習慣が逆に血糖を揺らしているケースなど、詳しくはこちらにまとめているので、よろしければぜひご覧ください。
LABO|精密栄養学の研究ノート血糖値の急な上下を防ぐ食べ方記事を読む →
第3章 Q&A読者の方からのご質問
Q1どうやって血糖値を測ればいいのですか?
Aいちばん手軽なのは、フリースタイルリブレに代表されるCGM(持続血糖測定)という方法です。腕に小さなセンサーを着けるだけで、一日の血糖値の動きを連続して見ることができます。
このCGMの面白いところは、同じものを食べても、その反応が人によってまったく違うとデータから分かる点です。「白米を食べたら誰もが同じように上がる」わけではなくて、あなたの身体がどう反応するかは、実際に測定してみないと分かりません。
とは言え、こうしたデバイスをわざわざ購入するのは躊躇される方は、まずは「食後の眠気」「だるさ」「集中の途切れ」といった体感を、メモに残すところから始めてもいいと思います。
僕自身、リブレを着けてみて初めて、自分のスパイクが食後ではなく、ストレスがかかった瞬間に起きていることに気づけました。
数字を測ること自体が目的ではありませんが、自分の体の現状を深く知るためには、こうしたデバイスも利用することをお勧めしています。
なお、こうしたデバイスは、国によって医療機器としての承認状況や入手方法が異なります(医療機関を通してのみ入手できるものもあります)。ご使用の際は、お住まいの国の規制と、取扱いの説明や医療機関の案内に従ってください。
Q1HRVを上げるためのコツは?
Aまず最初にお伝えしたいことがあります。それは、HRVは「上げる」ものというより、「整える」ものだと僕は捉えています。むやみに数値を引き上げようとすると、かえって力んでしまい、逆効果にもなりかねません。
HRVや自律神経を整える方法は、いたってシンプルです。例えば、睡眠の質を確保すること。4-7-8呼吸(4秒吸って、7秒止めて、8秒で吐く)のような、ゆっくりした呼吸を1日に何度も取り入れること。適度に身体を動かすこと。日中はしっかり光を浴びて、夜は暗くして過ごすこと。逆に、アルコールや就寝直前の食事、過剰なカフェインは控えめにすると、副交感神経が優位になり、体が回復モードに入りやすくなります。また口腔内の環境や腸の隠れた炎症をケアすることも、地味ですが、自律神経の状態に関わることがあります。
ただ、ここで大切なのは、数値に一喜一憂しすぎないことです。HRVはその日の睡眠や体調で簡単に変動するので、一日の数字に振り回されると、かえって自律神経が疲れてしまいます。見るべきはその日の数値の高い低いではなく、数日から数週間のゆるやかなトレンドを理解することが大事です。
僕もApple Watchで毎日HRVを測っていますが、低い時があっても過剰に反応しすぎないようにしています。「ああ、今日は休む日なんだな」と、身体からのメッセージとして受け取る。そのくらいの距離感が、結果的にHRVも整うように感じています。
Q1何を食べたらいいかよくわかりません。
Aその「よくわからない」という気持ち、とてもよく分かります。情報があふれているからこそ、かえって迷ってしまいますよね。そもそも、すべての人に当てはまる完璧な食事の正解はありません。その時々に最適な食事は、その人の体質やコンディションによって変わってくるからです。
ただ、原則として抑えておきたいポイントはいくつかあります。毎食たんぱく質をしっかり摂ること(1日あたり体重×1.2〜1.5g。腎臓に持病のある方は主治医にご相談ください)、野菜や食物繊維をできれば先に食べること、精製された糖を減らすこと、食べる順番を意識すること、そして加工食品を少し減らしていくこと。など。この大きな方向性は、多くの方に共通して役立つはずです。
そのうえで、自分の体質や血糖の反応に合わせて、少しずつ調整していけば十分です。ここで大切にしたいのが、「全部いっぺんにやろうとしない」こと。まずはどれかひとつだけ。「野菜を先に食べる」でも「朝にたんぱく質を足す」でも、できそうなことを一つから始めてみてください。
ちなみに、ご自身がどの栄養素をどれくらい摂れているのかを計算してみたい方は、こちらの栄養レポートも使ってみてくださいね。
