TSHと甲状腺ホルモンの関係
甲状腺ホルモンは、細胞がエネルギー(ATP)を作る量を調整し、体温や心拍、腸の動き、気分にも関わります。
甲状腺が作るのは主にT4で、T3はわずかです。T4の多くは肝臓や腸でT3に変えられ、細胞の中で実際に働くのはこのT3です。FT3・FT4は、血液中でたんぱく質と結びついていない、すぐ使える分を測った値です。
脳は、血液中の甲状腺ホルモンの量に応じて、TSHの量を変えています。足りなければTSHを増やし、多ければ減らします。
一般の基準範囲と、精密栄養学の目安
| 一般の基準範囲 | 精密栄養学の目安 | |
|---|---|---|
| TSH | おおむね0.5〜5 µIU/mL | 0.5〜2 µIU/mL |
| FT3 | 検査機関ごと | 3〜4.1 pg/mL |
| FT4 | 検査機関ごと | 0.8〜1.9 ng/dL |
TSHとFT3・FT4には全国共通の基準範囲がないため、お手元の結果票に印字された範囲を確かめてください。甲状腺の項目は健診の基本項目に入っていないことが多く、追加で頼んで測ります。
一般の基準範囲は、病気かどうかを分けるための範囲です。精密栄養学の目安は、体が無理なく働いている状態の目安として使っています。
低めのときに考えられる背景
TSHが低めなのは、甲状腺ホルモンが十分にある、または多すぎるために、脳がTSHを減らしているときです。
- 甲状腺ホルモンが多く作られているなど、医療機関で確かめるべき原因
- 甲状腺ホルモンの薬を飲んでいる
- ビオチンを含むサプリメントを飲んでいて、検査の値に影響が出ている
FT4やFT3も一緒に高いときは、甲状腺ホルモンが多すぎる流れと合っています。
高めのときに考えられる背景
TSHが高めなのは、甲状腺ホルモンが足りず、脳がもっと作るよう促しているときです。
- 鉄が足りず、甲状腺でT4を作る酵素が働きにくい
- 昆布などの海藻で、ヨウ素を多くとり続けている
- 甲状腺そのものの病気など、医療機関で確かめるべき原因
TSHが一般の基準範囲に入っていても、2を超えているときは、甲状腺ホルモンを増やすよう体が働きかけている段階と読むことがあります。
ほかの項目と合わせて読む
TSHが高くFT4が低いときは、甲状腺そのものでホルモンを作る量が落ちている流れなので、医療機関で確かめます。
FT4は保たれているのにFT3だけが低めなら、T4からT3への変換が落ちている形と考えます。糖質を厳しく控える食事や少ない食事量が続くと、体はエネルギーの消費を抑えようとしてT3を下げます。慢性的な炎症やストレスが続くときにも下がります。
FT3が低めなのにTSHが上がっていないときは、フェリチンを見て鉄の不足を確かめます。甲状腺ホルモンが足りないと、肝臓がLDLコレステロールを取り込みにくくなり、LDLが高めに出ることもあります。
暮らしで見直せること
食事の量、とくにたんぱく質が足りているか、糖質を極端に減らしていないかを見直します。甲状腺ホルモンを作り、T4をT3に変える過程で使われる鉄、セレン、亜鉛、ビタミンAが足りているかも確かめます。
ヨウ素は甲状腺ホルモンの材料ですが、とりすぎても働きを下げることがあるため、昆布などを毎日多く食べている場合は控えめにします。甲状腺の検査の前は、ビオチンを含むサプリメントを飲んでいないか確かめ、飲んでいるときは医療機関に伝えてください。
医療機関に相談したい目安
- 結果票に、再検査や精密検査の案内がある
- TSHやFT4が、基準範囲から外れている
- 動悸、手のふるえ、汗が多い、体重が急に減る
- 強いだるさ、寒がり、むくみ、便秘が続く
- 首の前のあたりが腫れている
よくある質問
TSHが基準内なら、甲状腺は問題ありませんか?
一般的には、TSHが基準内なら甲状腺ホルモンは足りていると考えます。ただし、T4からT3への変換が落ちていると、FT3だけが低めのことがあります。疲れやすさや冷えが続くときは、FT3・FT4も測って並べて見ます。
FT3が低いのは、甲状腺の病気ということですか?
FT3だけで甲状腺の病気とは決められません。食事の量や糖質が少ないとき、炎症やストレスが続くときにも下がります。FT4やTSHと合わせて見て、気になるときは医療機関で相談してください。
一般の基準範囲:日本臨床検査医学会「臨床検査の基準範囲・臨床判断値」(2025年11月)ほか。検査機関によって少し違います。精密栄養学の目安:Nomad Academy の精密栄養学講座の血液検査資料。