亜鉛は何を表す数字か
亜鉛は酵素の中に組み込まれて、その酵素が働けるようにします。たんぱく質やDNAを作る酵素、活性酸素を消すSOD、ALPなどがその例です。肌や髪、爪、腸の粘膜のように、毎日作り替えられる場所でとくに多く使われます。
血液の中の亜鉛は、およそ8割が赤血球の中にあり、血清にあるのは2割ほどです。血清の亜鉛は、多くがアルブミンと結びついて運ばれています。そのため血清亜鉛は、体全体の亜鉛の量をそのまま表す数字ではありません。
一般の基準範囲と、精密栄養学の目安
| 一般の基準範囲 | 精密栄養学の目安 | |
|---|---|---|
| 血清亜鉛 | 80〜130 µg/dL | 90〜120 µg/dL |
| 銅 | 結果票の範囲 | 80〜120 µg/dL |
日本臨床栄養学会の「亜鉛欠乏症の診療指針」では、60〜80 µg/dLを潜在性の亜鉛不足、60未満を亜鉛不足としています。亜鉛は健診の基本項目に入っておらず、追加で頼んで測る項目です。
一般の基準範囲は、病気かどうかを分けるための範囲です。精密栄養学の目安は、体が無理なく働いている状態の目安として使っています。
血清亜鉛は朝8時ごろに最も高く、午後3時ごろには朝より2割ほど低くなることがあります。食事のあとにも下がるため、採血の時刻と食事の有無も結果と一緒に控えておきます。
低めのときに考えられる背景
- 牡蠣や赤身の肉、卵など、亜鉛の多い食品が少ない
- 加工食品が多く、添加物のリン酸塩などで吸収が下がっている
- ストレスやお酒、カフェイン、甘いものが多く、尿に出ていく量が増えている
- 胃酸が少ない、腸の粘膜が荒れているなどで、吸収しにくい
- 体のどこかに炎症がある、アルブミンが低い
- 服用中の薬の影響や、腸、肝臓、腎臓の病気など、医療機関で確かめるべき原因
精密栄養学では、味がわかりにくい、肌荒れや抜け毛、傷の治りが遅い、かぜをひきやすいといった体感も、亜鉛の値と並べて見ます。
高めのときに考えられる背景
- 亜鉛のサプリメントをとっている
- 採血のときに赤血球が壊れ(溶血)、赤血球の中の亜鉛が血清に出た
- 朝の早い時刻に採血した
亜鉛をとりすぎると、腸で銅の吸収が妨げられ、銅が足りなくなることがあります。銅は、鉄を体の中でうまく運ぶために必要なたんぱく質の材料です。そのため銅が減ると、貧血につながることもあります。
ほかの項目と合わせて読む
亜鉛は、ALP、銅、アルブミン、CRPと並べて読みます。ALPは、働くのに亜鉛とマグネシウムを使う酵素です。精密栄養学では、低めのALPを亜鉛不足の手がかりのひとつにします。ただしALPは年齢や体質、甲状腺の働きでも低めに出るため、ALPが低いことだけで亜鉛不足とは言えません。血清亜鉛を測って確かめます。詳しくはALPのページにまとめています。
銅と亜鉛は、腸で吸収されるときに競い合う関係にあります。精密栄養学では、亜鉛を銅で割った値が1.0〜1.2ほどになる釣り合いを目安にします。銅は炎症があるときやエストロゲンの影響が強いときに上がりやすく、銅が高いと亜鉛は下がりやすくなります。
アルブミンが低いときや、CRPが高いときは、血清亜鉛が低めに出やすくなります。その場合は、体の亜鉛が足りないのか、測ったときの条件で下がっているのかを分けて考えます。
暮らしで見直せること
亜鉛は、牡蠣、牛肉、豚レバー、卵黄、チーズ、納豆、ナッツに多く含まれます。ビタミンCやクエン酸を含む食品と一緒にとると、吸収されやすくなると言われています。加工食品を減らし、お酒やカフェイン、甘いものが重なる日を見直します。
亜鉛は、胃酸が少ないと吸収されにくくなります。よく噛んで食べ、酢の物や梅干しなど酸味のあるものを食事に添えます。
亜鉛のサプリメントを長く続けると、銅が減ることがあります。胃酸の少ない人は、飲んだあとに気分が悪くなることもあります。始める前に血清亜鉛と銅を測り、使うかどうかは医療機関で相談して決めてください。
医療機関に相談したい目安
- 結果票に、再検査や精密検査の案内がある
- 血清亜鉛が60 µg/dLを下回っている
- 味がわかりにくい、口内炎や皮膚炎、抜け毛が続く
- 服用中の薬があり、亜鉛が低めと言われた
- 亜鉛のサプリメントを続けていて、貧血や銅の低さを指摘された
よくある質問
血清亜鉛は、いつ採血しても同じ値ですか?
同じにはなりません。朝に高く午後に低くなり、食事のあとや炎症があるときにも下がります。前回と比べるときは、午前中の同じくらいの時刻に、空腹のまま採血を受けると比べやすくなります。
亜鉛は、多めにとっておけば安心ですか?
多ければよいわけではありません。亜鉛が増えると銅の吸収が下がり、銅が足りなくなることがあります。精密栄養学では亜鉛を90〜120 µg/dLの範囲で見て、銅との釣り合いも確かめます。
一般の基準範囲:日本臨床検査医学会「臨床検査の基準範囲・臨床判断値」(2025年11月)ほか。検査機関によって少し違います。精密栄養学の目安:Nomad Academy の精密栄養学講座の血液検査資料。