Qアーユルヴェーダでヴァータ体質と言われました。そもそもアーユルヴェーダとは何なのか、そしてどのような食事や生活習慣を心がけるとよいのか、教えてください。
A僕自身もヴァータなので、これは人ごとではないテーマです。はじめに、アーユルヴェーダそのものから少しご説明します。
アーユルヴェーダは、数千年前の古代インドで生まれた、世界最古の伝統医学のひとつです。サンスクリット語で「アーユス」は生命、「ヴェーダ」は知識を意味し、生命の科学と訳されます。目的は、病気を治すことだけではありません。健康な人の健康を守り、病んでいる人の病を治す。病気になる前に整えることを大切にする、予防の医学です。
アーユルヴェーダでは、人の心と体の性質を、三つのエネルギーの配分で捉えます。これをドーシャと呼びます。
ヴァータは、風と空の性質を持つ、動きのエネルギーです。呼吸や血流、神経の伝達を担い、ほかの二つを動かす原動力でもあるので、生命エネルギーの王とも呼ばれます。優勢な人は細身で冷えやすく、頭の回転が速く、発想が豊かです。
ピッタは、火と水の性質を持つ、変換のエネルギーです。消化や代謝、体温を担います。優勢な人は集中力と判断力に優れ、暑がりで、情熱的です。
カパは、水と地の性質を持つ、安定のエネルギーです。体の構造や潤いを担います。優勢な人は穏やかで持久力があり、どっしりしています。
大事なのは、どれか一つだけの人はいない、ということです。ヴァータ体質と言われても、ピッタもカパも必ず持っていて、その配分がその人らしさになっています。ですから、ヴァータを消そうとする必要はありません。
そのうえで、ヴァータを整える鍵は、三つの向き合わせで覚えると分かりやすくなります。冷えには温める。乾きには潤す。動きすぎには落ち着きを与える。具体的には、温かい飲みものとスープ。それから、セサミオイルで全身をさすってから入浴するアビヤンガという方法も、乾燥と緊張を和らげる習慣として伝わってきました。
アーユルヴェーダでは、ヴァータは消化の火が不安定で、消化液も酵素ももともと多くないと捉えます。ここに精密栄養学の視点から一つ足すなら、消化する力が弱いうちに体にいいものをたくさん食べても、かえって裏目に出やすいということです。一度にたくさんではなく、温かいものを少量ずつ、決まった時刻に。僕が朝いちばんに白湯を飲むのも、冷やさないためです。
では、なぜ僕が精密栄養学に、アーユルヴェーダの視点を取り入れているのか。
アーユルヴェーダには、生まれ持った体質を指すプラクリティと、いまの状態を指すヴィクリティという考え方があります。前者は一生変わらず、後者は日々の暮らしで変わっていく。実はこれは、遺伝子と血液検査の関係とよく似た構造です。遺伝子は一生変わらない設計図で、血液検査はいまの状態を示す数字です。
数千年前の人々は、遺伝子も血液も見ることができませんでした。それでも、人をよく観察して、生まれ持ったものといま起きていることを分けて考えていた。その知恵が現代の検査とこれほど重なることに、僕はいつも驚かされます。
別々の道具で調べた結果を重ねて見ると、手がかりが増えます。
一つの検査、一つの理論だけで人を見ると、どうしても見落としが出ます。遺伝子は何が起きやすいかを教えてくれますが、それを毎日どう扱えばいいかまでは教えてくれません。そこを教えてくれるのが、長い時間をかけて磨かれてきた暮らしの知恵です。反対に、アーユルヴェーダの見立てだけでは確かめきれないことを、数字が裏づけてくれることもあります。互いの足りないところを補い合えることが、統合的に見るいちばんの利点だと考えています。
最後にひとつ。風の性質が強い人が、穏やかなカパを目指す必要はありません。整えるというのは、別の体質になることではなく、自分の配分のなかで揺れ幅を小さくすることなのです。
この回答は、メルマガ Vol.17(2026年9月27日配信)のQ&Aからの転載です。からだや食事のご質問は、メルマガへの返信か [email protected] までお寄せください。