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夜中に目が覚めがちな人が、食事で気をつけたいこと

夜中に目が覚めがちな人が、食事で気をつけたいこと

先日、クライアントの方から嬉しいご報告をいただきました。

「夜中に目が覚めなくなりました」

40代半ばの男性です。お子さんが二人いらっしゃって、仕事も忙しく、それでも運動量はかなり多い方でした。食べるものにも気をつけていて、スマートフォンとスマートウォッチで歩数も心拍も記録していました。

それでも、眠りだけが長いこと整いませんでした。寝つきは悪くない。ところが夜中に必ず目が覚める。朝、起きた時点で疲れが残っている。

変えたのは、日中の食事のとり方です。

なお、この記事はご本人の了承をいただいたうえで、内容を一部一般化して書いています。検査の数値は掲載していません。

最初に目についたのは、間食の回数でした

食事そのものは、よく整っていました。ただ、食事と食事のあいだに口に入るものが、思いのほか多かったのです。

仕事の合間のコーヒーと、いっしょにつまむお菓子。夕方の甘い飲みもの。子どもたちが寝たあとの、ひとつまみ。

ご本人にとって、これらは「食事」ではありませんでした。ですから記録にも残っていません。ここは、多くの方に共通するところだと思います。

間食で見ておきたいのは、量よりも回数です。糖質を含むものが口に入るたびに血糖は上がり、それを下げるためにインスリンが出ます。回数が多ければ、一日のうちでインスリンが出ている時間が長くなります。

フリースタイルリブレをつけ直して、血糖値もしばらく測っていただきました。激しいスパイクこそ出ないものの、一日を通じて変動の幅が大きく出ていました。健康診断では何も指摘されない方でも、一日の波として眺めると、こういうかたちが出てくることがあります。

血糖が下がる時、体は目を覚ますホルモンを出す

日中の血糖と、夜中に目が覚めることが、どうつながるのでしょうか。

血糖が下がりすぎると、体はそれを戻そうとします。この時に出るのが、コルチゾール、アドレナリン、ノルアドレナリンです。どれも体を活動へ向かわせるホルモンです。

これが夜中に起きると、眠っている体が覚醒の方向へ動きます。しかもホルモンが動き始めるのは、目が覚める数分前です。目が覚めたから体が動いたのではなく、体が動いた結果として目が覚めている、という順番になります。

夜中の歯ぎしりや食いしばりにも、同じところが関わっていることがあります。

夜になると、同じ食事でも血糖は上がりやすくなる

ここからが、僕が学んだ時にいちばん意外だったところです。

メラトニンは、夜の暗さを合図に増えるホルモンで、眠りを促す働きで知られています。ところが、メラトニンの働きはそれだけではありません。膵臓のβ細胞にあるMT1・MT2という受容体に直接くっついて、インスリンの分泌を抑えます。

インスリンは、血糖を下げることのできる、ほとんど唯一のホルモンです。その分泌が抑えられている時間帯に食べれば、同じものを同じ量だけ食べても、血糖はより高く上がり、より長くとどまります。夜遅い食事が体にこたえるのは、消化に時間がかかるからだけではないのです。

では、上がりやすいはずの夜に、なぜ下がって目が覚めるのでしょうか。

インスリンの出方が鈍るのであって、出なくなるわけではありません。高い血糖が続けば、膵臓は遅れて、その分まとめて出してきます。ところがその頃には、食べたものの吸収は終わりかけています。出遅れたインスリンが、減りつつある糖に対して効くことになります。

つまり、上がり方が大きかった夜ほど、そのあとの下がり方も深くなります。眠っているあいだは、一日のうちでもっとも長い絶食時間です。山が高い夜ほど、谷も深い。そういう関係です。

変えたのは、四つだけ

いくつも同時に始めると、何が効いたのか分からなくなります。お願いしたのは、次の四つでした。

一つめは、夕食のかたちです。 糖質だけで終えず、たんぱく質と脂質を必ず添えていただきました。同じ量の糖質でも、たんぱく質や脂質と一緒に食べれば、血糖の上がり方は緩やかになります。

二つめは、間食の中身です。 甘い飲みものとお菓子を、ゆで卵、チーズ、無塩のナッツに替えました。回数を減らすことは、この段階ではお願いしていません。まず中身だけを替えていただきました。

三つめは、夜の光です。 就寝の1時間前から、スマートフォンとテレビの画面を暗くするか、ナイトモードに切り替えていただきました。青い光はメラトニンの分泌を抑えます。そしてメラトニンの立ち上がりが遅れれば、寝つきだけでなく、夜の糖の処理まで一緒に後ろへずれていきます。

四つめは、夕方以降の飲みものです。 コーヒーと緑茶をやめ、カフェインを含まないものに替えていただきました。

四つめには、覚醒作用とは別の理由もあります。さきほど、血糖が下がった時にノルアドレナリンが出るとお伝えしました。出たものは、役目を終えたら分解されなければなりません。その分解を担う酵素のひとつがCOMTで、カフェインと緑茶のカテキンは、この働きを妨げます。つまり夜のコーヒーは、眠気を飛ばすだけではありません。夜中に出た興奮系のホルモンを、片づきにくくします。

寝室の環境は、何ひとつ変えていません。数週間後、冒頭のご報告をいただきました。

矢印は、逆向きにも進む

ここまでは、日中の食べ方が夜の眠りに影響するという話でした。実際には、逆の向きも同じくらい強く働きます。

眠りが足りない日は、間食に手が伸びやすくなります。交感神経が優位に傾いている時ほど、体はすぐに使えるエネルギーを求めます。睡眠不足そのものが、食欲に関わるホルモンのバランスを変えることも知られています。

間食が増えれば眠りが浅くなり、眠りが浅ければ間食が増える。この循環は、どちらが先かを決めなくても構いません。入りやすいところから手をつければ、どちらの向きからでも緩んでいきます。

血液検査では、どこに表れるか

空腹時血糖の理想値は80〜90mg/dL、HbA1cは5.0〜5.3%です。ここから外れて高く出ている時は、その奥でインスリンの効きが落ちてきている可能性があります。

中性脂肪の理想値は70〜90mg/dL。名前のせいで脂質の摂りすぎを疑われがちですが、実際には余った糖質が肝臓で作り替えられた分がかなりを占めます。詳しくは前回の記事に書きました。

そしてBUN(尿素窒素)です。理想値は14〜17mg/dL。ここが低い時は、たんぱく質が足りていないか、食べていても消化吸収できていない可能性があります。間食への欲求が強い方の検査結果で、よく見かける項目です。

いびきや日中の強い眠気をともなう場合は、睡眠時無呼吸の可能性もあります。こちらは一度、医療機関にご相談ください。

眠りの準備は、日中に始まっています

夜中に目が覚める。朝、起きた時点でもう疲れている。こうした時、まず変えようとするのは、たいてい寝室の環境や、寝る直前の習慣です。

もちろん、そこも大切です。ただ、夜中に体を起こしているものが血糖なら、打つ手があるのは昼です。

今夜どう眠れるかは、すでに今日の昼までに実はかなりの部分が決まっているのです。


※ なお、ここに挙げた数値はあくまで目安です。検査の値はその日の水分の状態や直前の食事でも動きますし、精密栄養学の理想値は病気の有無を判定するためのものではありません。気になる値がある時は自己判断なさらず、かかりつけの医師にご相談ください。