空腹時血糖は何を表す数字か
食事をしていない間も、脳や赤血球はブドウ糖を使い続けています。そのため体は、食べない時間も血糖を一定の範囲に保とうとします。
夜の間は、肝臓が蓄えていたグリコーゲンを分解し、ブドウ糖として血液に出します。蓄えが減ってくると、肝臓はアミノ酸や乳酸から新しくブドウ糖を作ります。この働きを糖新生と呼びます。
血糖を下げるホルモンはインスリンです。上げる側には、グルカゴン、コルチゾール、アドレナリンがあります。空腹時血糖は、これらのホルモンと肝臓の働きがつり合ったところの値です。
一般の基準範囲と、精密栄養学の目安
| 一般の基準範囲 | 精密栄養学の目安 | |
|---|---|---|
| 空腹時血糖 | 73〜109 mg/dL | 80〜90 mg/dL |
| 空腹時インスリン | 結果票の範囲 | 2〜4 μU/mL |
日本の基準では、空腹時血糖が110未満は「正常型」、126以上は「糖尿病型」とされます。特定健診では100以上で、保健指導の対象になります。
一般の基準範囲は、病気かどうかを分けるための範囲です。精密栄養学の目安は、体が無理なく働いている状態の目安として使っています。HbA1cの読み方は、HbA1cのページにまとめています。
高めのときに考えられる背景
- 前の晩の食事が遅い、糖質やお酒が多かった
- 睡眠が短い、朝から緊張やストレスが強い
- 夜中に血糖が下がりすぎ、血糖を上げるホルモンが出ている
- 体のどこかに炎症が続いている
- インスリンの出方や効き方が落ちているなど、医療機関で確かめるべき原因
コルチゾールは朝に多く出るホルモンで、肝臓の糖新生を進めて血糖を上げます。ストレスが続いてコルチゾールが多い人は、朝の血糖が高めに出ることがあります。夜中の低血糖のあとも、アドレナリンやコルチゾールが出て、朝の値が上がることがあると言われています。
炎症が続くと、炎症のときに出る物質がインスリンの働きを妨げ、細胞が糖を取り込みにくくなります。精密栄養学では、空腹時血糖が高めのとき、食事に加えてストレスや炎症の影響も考えます。
低めのときに考えられる背景
- 食事の間隔が長い、食べる量が少ない
- 糖質を強く控えている
- 前の晩にお酒を飲んだ
- インスリンがたくさん出ていて、血糖をすぐに下げている
- 服用中の薬やホルモンの病気など、医療機関で確かめるべき原因
お酒を飲むと、肝臓はアルコールの分解を優先します。その間は糖新生が後回しになり、夜中から朝にかけて血糖が下がりやすくなります。糖質を強く控えている人は、肝臓が糖新生で血糖を支え続けています。精密栄養学では、この状態が長く続くと肝臓の負担が大きくなると考えます。
血糖が低めのときは、朝の起きにくさや疲れやすさ、午前中の集中の続きにくさとして感じることがあります。
ほかの項目と合わせて読む
空腹時血糖は、HbA1c、空腹時インスリン、中性脂肪と並べて読みます。空腹時血糖が目安の範囲でも、インスリンが4を超えるときは、たくさんのインスリンで血糖を抑えていると考えます。この状態が続いてインスリンの効きが落ちると、血糖が上がり始めると言われています。
空腹時血糖は低めなのにHbA1cが高めのときは、食後に大きく上がり、そのあと下がりすぎる波を考えます。空腹時血糖だけが高めでHbA1cが目安の範囲なら、採血の朝だけ上がっていることもあります。空腹時血糖と中性脂肪がそろって高めのときは、コルチゾールや炎症の影響も考えます。
暮らしで見直せること
採血の前の晩は、ふだんどおりの時刻に夕食を済ませ、お酒は控えます。前回と比べるときは、睡眠や前の晩の過ごし方もそろえます。
低めの人は、糖質を急に減らしすぎていないかを確かめます。ごはんやいも類を少しずつ戻し、食事の間隔があきすぎないように分けて食べます。高めの人は、夜遅い食事やお酒が続いていないか、睡眠が削られていないかを見直します。
マグネシウムは、ブドウ糖をエネルギーに変える過程で使われるミネラルです。海藻や大豆製品、ナッツからとります。夜中や朝の血糖の動きは、腕につけて続けて測る機器(CGM)で確かめることもできます。
医療機関に相談したい目安
- 空腹時血糖が126以上、または結果票に再検査や精密検査の案内がある
- のどの渇き、尿の回数の増加、急な体重の減少が続く
- 冷や汗、手のふるえ、動悸など、低血糖のような症状をくり返す
- 空腹時血糖が一般の基準範囲を下回る
- 血糖を下げる薬を飲んでいて、低めの値が出た
よくある質問
朝の空腹時血糖だけが高めなのはなぜですか?
朝は、血糖を上げるコルチゾールが多く出る時間です。睡眠不足やストレス、前の晩のお酒や遅い食事、夜中の低血糖のあとの反動でも、朝の値は高めに出ます。HbA1cも高めなら、医療機関で相談してください。
空腹時血糖は、低めのほうが安心ですか?
そうとは言えません。精密栄養学では80〜90 mg/dLを目安にしています。下回るときは、食事の量や間隔、糖質の控えすぎ、前の晩のお酒を振り返り、インスリンが高めでないかも確かめます。
一般の基準範囲:日本臨床検査医学会「臨床検査の基準範囲・臨床判断値」(2025年11月)ほか。検査機関によって少し違います。精密栄養学の目安:Nomad Academy の精密栄養学講座の血液検査資料。