ASTとALTは何をしている酵素か
ALTは、アラニンというアミノ酸をピルビン酸に組み替える酵素です。ピルビン酸は肝臓でブドウ糖に作り直され、食事の間や睡眠中の血糖を支えます。ALTは、そのほとんどが肝臓の細胞の中にあります。
ASTも、アミノ酸を組み替えてエネルギー作りにつなげる酵素です。肝臓のほか、筋肉や心臓、赤血球にも含まれるため、筋肉の状態によっても動きます。
どちらの酵素も、活性型のビタミンB6がないと働けません。ビタミンB6を活性型に変えるときには、マグネシウムと亜鉛も使われます。
一般の基準範囲と、精密栄養学の目安
| 一般の基準範囲 | 精密栄養学の目安 | |
|---|---|---|
| AST | 13〜30 U/L | 20〜22 U/L |
| ALT(男性) | 10〜42 U/L | 20〜22 U/L |
| ALT(女性) | 7〜23 U/L | 20〜22 U/L |
表の一般の基準範囲は、日本臨床検査医学会がまとめた共用の範囲です。結果票に印字された範囲とは、少し違うこともあります。特定健診では、ASTかALTが31以上になると保健指導の対象になります。
一般の基準範囲は、病気かどうかを分けるための範囲です。精密栄養学の目安は、体が無理なく働いている状態の目安として使っています。そのため、高すぎる値だけでなく、低すぎる値にも目を向けます。
低めのときに考えられる背景
- 肉や魚、卵、大豆などのたんぱく質が少ない、食事の量が少ない
- ビタミンB6が足りない、またはB6を活性型に変えるマグネシウムや亜鉛が足りない
- 筋肉の量が少ない(ASTが低めに出やすい)
- 肝臓の働きが大きく落ちているなど、医療機関で確かめるべき原因
一般の健診では、低い値はあまり問題にされません。精密栄養学では、ASTとALTがそろって20を下回るとき、ビタミンB6やたんぱく質が足りているかを考えます。
高めのときに考えられる背景
- 糖質や脂質のとりすぎ、内臓脂肪の増加で、肝臓に脂肪がたまっている
- 無理なダイエットでたんぱく質が足りず、肝臓に脂肪がたまっている
- 飲酒
- 服用している薬やサプリメントの影響
- 激しい運動や筋トレのあと(ASTが上がる)
- 肝炎ウイルスなど、医療機関で確かめるべき原因
ALTはほぼ肝臓だけにある酵素なので、ALTが高いときは肝臓の側の変化を考えます。ASTだけが高く、ALTがふつうのときは、運動や筋肉の影響も考えます。詳しくは、お酒を飲まないのに肝臓の数値が高いのはなぜ?でお答えしています。
ほかの項目と合わせて読む
ASTとALTは、γ-GTPや中性脂肪と並べて読みます。ALTがASTを上回り、γ-GTPや中性脂肪も高めなら、肝臓に脂肪がたまっている流れと合っています。
低めのときは、BUN(尿素窒素)やアルブミン、総たんぱくと並べます。どれも低めなら、たんぱく質が足りていない流れと合っています。
二つの差も見ます。運動のあとでもないのに、ASTがALTより7以上高いときは、ビタミンB6が足りているかを考えることがあります。ASTだけが高いときは、筋肉から出る酵素のCKも一緒に見ると、筋肉の影響かどうかを確かめやすくなります。
暮らしで見直せること
高めのときは、甘い飲み物やお菓子など、糖質のとりすぎがないかを見直します。お酒の量と回数も見直します。極端なダイエットは避けて、肉や魚、卵、大豆製品からたんぱく質をとります。
低めのときも、まずたんぱく質の量を見直します。ビタミンB6は、まぐろやかつお、鶏肉、バナナ、玄米に多く含まれます。B6を働かせるマグネシウムは海藻や大豆製品、亜鉛は牡蠣や赤身の肉からとれます。
検査の前日や前々日に激しい運動をすると、ASTが高めに出ることがあります。ふだんの値を知りたいときは、運動を控えてから採血を受けます。
ビタミンB6のサプリメントは、量が多いまま長く続けると、手足のしびれにつながることがあります。使うかどうかは、医療機関で相談してから決めてください。
医療機関に相談したい目安
- 結果票に、再検査や精密検査の案内がある
- ASTかALTが31以上で、次の検査でも下がらない
- 皮膚や白目が黄色い、尿の色が濃い、強いだるさが続く
- 薬を飲み始めてから数値が上がった
よくある質問
お酒を飲まないのに、ALTが高いのはなぜですか?
お酒以外にも、糖質や脂質のとりすぎ、内臓脂肪、無理なダイエットによるたんぱく質の不足で、肝臓に脂肪がたまることがあります。薬や運動の影響で上がることもあるので、まず医療機関で原因を確かめてください。
ASTとALTは、低いほうがよいのですか?
低いほどよいとは考えません。精密栄養学では、二つがそろって20を下回るとき、ビタミンB6やたんぱく質が足りているかを考えます。BUNやアルブミンと並べると、読み取りやすくなります。
一般の基準範囲:日本臨床検査医学会「臨床検査の基準範囲・臨床判断値」(2025年11月)ほか。検査機関によって少し違います。精密栄養学の目安:Nomad Academy の精密栄養学講座の血液検査資料。