Q先週のメルマガに書いてあった、「心と体をクロスオーバーさせる」という視点が非常に興味深かったです。ストレスを解消するのに、何かおすすめのアプローチは他にもありますか?
Aご購読ありがとうございます!頭で考えても解決できない課題は、体を使ってアプローチする。時にこれは非常に有効な手段になりますよね。中でも最近僕が注目しているのは、眼球運動です。
Vol.13でご紹介した呼吸法に加えて、このアプローチは過剰になった交感神経を鎮め、副交感神経を働きやすくするのに、かなり有効だと考えています。
人が脳に取り込む刺激の大部分は、視神経から来るものだと言われています。
逆に言えば、目から入る刺激を整えて、そこから派生する疲労を軽くしてあげれば、リラックス感が高まるのは理にかなっています。
特にスマホやパソコンのように、非常に狭い領域に視線を長時間固定していると、知らず知らずのうちに脳が疲れていきます。
その状態が続くと、物理的な視野だけでなく、アイデアや感情の幅、ひいては仕事のパフォーマンスや視点も低くなってしまうように感じています。
では、やり方を具体的にご紹介いたします。
まず始める前に、いまの体の状態をチェックします。
立った状態で前屈をして、床に指がどのあたりまで届くか、確認しましょう。
次に、腰に手を当てずに上体を後ろへ反らして、どのくらいスムースに倒れるか。
最後に、体を左右にひねって、どこまで後ろ側が見えるかをチェックします。
次に、三つのステップがあります。
① サッカード(視線を左右に移動させる)
両手を斜め前に、70センチほど離して広げます。正面を見た時に、両方の親指がぎりぎり視界に入るくらいの幅です。
顔は正面のまま動かさず、目だけで右の親指の爪、左の親指の爪、と交互にしっかり見つめます。5往復ほど、くれぐれもゆっくりと行なってください。
同じことを上下、斜め、そして前後(片方の手は鼻から10〜20センチ、もう片方はできるだけ遠くに)でも行います。

② パースート(ゆっくりと対象物を目で追いかける)
ペンか指を1本立てて、顔から40センチほど離します。
顔は動かさず、目だけでゆっくり追いかけます。左右に5往復、それから斜め方向にも同じように。
ここで大事なのは、速くやらないことです。速く動かすと酔ってしまいますし、刺激が過剰になります。ゆっくりと、そしてしっかりと焦点を合わせながら、目を動かしてください。

③ VOR(目は止めて、顔の向きだけを動かす)
今度は逆です。
親指を顔から40センチほどのところに固定して、そこをじっと見つめたまま、顔だけをゆっくり右へ、左へと動かします。
慣れてきたら、斜め方向や上下でも行います。
これは、目と首を別々に動かす練習になります。やってみるとお分かりいただけると思いますが、目が親指から離れて顔と一緒に動いてしまったり、首に力が入ってしまったり、スムーズに行うのは思った以上に難しいはずです。

ポイントは三つ
速くやらないこと。多くても5往復くらいまでにすること。そして、呼吸を止めないこと。
やりすぎると、かえって脳への刺激が過剰になってしまいます。1日1回で十分ですし、面倒な時はサッカードだけでも構いません。
では、ここでもう一度体の状態をチェックしてみましょう。
前屈、後屈、ひねり。さっきと同じ場所に立って、比べてみましょう。
いかがでしょうか?
目しか動かしていないのに、体の柔軟性だけでなく、顔周りの筋肉や神経、気持ちの状態が変わっていることがあります。
仕組みとしては、後頭部の付け根に、目の動きと連動して働く小さな筋肉があります。人はもともと、視線を向けた方向へ瞬時に頭を向けるようにできているので、目を動かすとここが自動的に反応するのです。
そしてこの筋肉には、体の位置を感じ取るセンサーが非常に高い密度で詰まっています。
ですから目が固まると首の奥が固まり、そこから下が全部つられて硬くなる。逆にここをほぐせば、遠く離れた場所までゆるむ。前屈できる角度が変わるのは、そのような仕組みです。
僕は、仕事やPC作業などで頭が煮詰まってきた時にやることが多いです。首の後ろがゆるんで、視界が少し広がったように感じます。実際に気持ちもリラックスできますし、Apple Watchで測るとHRV(心拍変動)も若干上向きます。
外を歩くとアイディアが湧く、というのも、おそらく近いことが起きているのだと思います。景色が動く分、視線が自然といろいろな方向に向き、適度なリラックス感が脳を活性化するのかもしれません。
とはいえ、目や首に持病のある方、めまいが出やすい方は、絶対に無理をなさらないでください。途中で気分が悪くなった時も、すぐにやめて休むようにしましょう。
忙しい毎日でもこうしたテクニックを活用して、ふとした時に本来の自分自身に戻る習慣を、ぜひ身につけておくと良いのではと思います。
この回答は、メルマガ Vol.14(2026年8月30日配信)のQ&Aからの転載です。からだや食事のご質問は、メルマガへの返信か [email protected] までお寄せください。