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INNER TRAVELER Vol.13

頭で頭は鎮められない、ホリスティックという実務

2026年8月23日配信
今週の精密栄養学:同じ深呼吸でも、効き方は違う。目的から選ぶ、10の呼吸法

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第1章 今週の一言頭で頭は鎮められない、ホリスティックという実務

ここではHSS型HSP(刺激を求めつつ、繊細に感じ取る気質をあわせ持つタイプ)の傾向を持つ筆者が、「常に新たな刺激を求める傾向」と「ストレスや過剰な刺激に疲弊しがち」という相反する気質を持つ自分とどのように向き合い、快適な暮らしとさらなる創造性を実現しようとしているのか、その旅路をリポートしています。

皆さんは、頭の中のモヤモヤを、考えることで何とかしようとされた経験はありませんか?

”ああでもない、こうでもない、でも、こうしてみたらどうだろう…いや、それとも…”

そんな風に、答えの出ない問いをさまよい続けてしまう、そんな状態です。

以前にこのメルマガでも少し触れましたが、僕は飛行機の中で軽いパニック状態になったことがあります。

あの時は仕事やビザに関する慢性的なストレスから、交感神経が優位な状態が続き、首や肩、背中もガチガチになっていて、うまく呼吸もできないような状態でした。

そのせいもあってか、長時間、飛行機という閉所に閉じ込められるという状況に、恐怖を感じてしまったのです。

飛行機の中で呼吸ができなくなったり、自分をコントロールできなくなったらどうしようという不安から、離陸前の30分程の間どうにも落ち着かず、体もじっとしていられませんでした。

その時に僕は、とにかく気持ちを落ち着けようとして、

“大丈夫” ”いつものフライトと同じ” ”数時間で着くから問題ない”

そんな風に、自分に言い聞かせました。

でも、そんな言葉を頭の中で繰り返すたび、かえって焦りが何故か強くなっていったのを覚えています。

”やっぱりダメだ、震えが止まらない、それなら次は…”

色々と試行錯誤する中、一番効果があったのは、自分を説得することではなく、お腹のあたりに手を置いて、息を長くゆっくりと吐く呼吸法でした。

どうやら頭で頭を鎮めようとするのは、思っている以上に難しいことのようです。

でも、そんな時は体の方からアプローチをしてみると、効き目がある場合があるように、自分の経験からも感じます。

さて、少し話は変わりますが、皆さんは「ホリスティックなアプローチ」や「統合医療」という言葉に、どのような印象をお持ちでしょうか。

なんだか得体が知れない、エビデンスがあるのかどうかもよくわからない。

そう感じられる方も、少なくないと思います。

まず、僕がクライアントの方に食事や生活習慣のご提案をする際、そのベースにあるのは精密栄養学です。

血液検査のデータや遺伝子特性など、お一人お一人によって異なるお体のコンディションや仕組みをもとに最適なアプローチを探っていく考え方です。

その上で、アーユルヴェーダや東洋医学、ウェアラブルデバイスで測定できる運動や睡眠、HRV(心拍変動)などのデータなども重ねていきます。

なぜ重ねるのかというと、ひとつの視点やアプローチだけでは、どうしても届かない場所があるからです。

たとえば仕事やスポーツなどで、「パフォーマンスがうまく発揮できない」「自信が持てない」というお悩みをお抱えの方は少なくないようです。

かつては、これはメンタルの問題だからメンタル面にアプローチをする必要があると考えられていたように思います。いわゆる精神論やメンタルをコントロールするテクニックなどです。

僕も学生時代はそれなりに気合いを入れて部活(サッカー)に取り組んでいたので、その重要性も理解しているつもりです。

パフォーマンスを高めるために努力をする、不安をかき消せるだけの練習をする、こうした取り組みはもちろん大切です。

そして自信を高めるためには、小さな目標を設定し、ひとつずつクリアして、自己肯定感を積み上げていく。もちろん、これも有効だと思います。

一方で、同じことを神経伝達物質の側から眺めてみると、また違う視点から説明ができます。

Vol.11でお話ししたとおり、僕はCOMTという遺伝子がゆっくり型(Met/Met)で、ドーパミンが脳の中に残りやすいタイプです。つまり、一つのことに深く集中することには長けているものの、一方で刺激やストレスも頭に長く残り続ける傾向があるようです。

このCOMTという酵素が働くためには、マグネシウムと、葉酸やB12からつくられるメチル基が必要になります。材料が足りなければ、ドーパミンの処理も遅くなります。

つまり「うまくいかなかったらどうしよう」「自分にはできないかもしれない」という不安や心配は、気の持ちようだけの話ではなく、神経伝達回路と栄養素の話でもあるのです。

ちなみに、やる気や集中力につながるドーパミンを生成する際にはビタミンB6、実際に行動を起こすきっかけとなる神経伝達物質であるノルアドレナリンを生成する際には、ビタミンCと銅が必要になります。

このように、ご自身のメンタルの状態や行動力は、神経回路の特性やそれを支える栄養素の状態によっても大きく左右されうるということは、理解しておく必要があると思います。

ここで、冒頭の話に戻ります。

頭の中のモヤモヤを、頭だけで解こうとするのには限界があります。

そんな時は、少し体を動かして心拍を上げてみる、呼吸を変えてみる、HRVの数字を眺めてみる。

そんな風にアプローチする場所を変えてみると、有効な場面があるかもしれません。

こうしたクロスオーバーの視点が、自分の考え方の幅を広げてくれる点に関して、面白い記事を見つけたので少しご紹介させてください。

WIRED日本版に、ケヴィン・ケリーの「潜在空間とは何か?──人類の創造性を解き放つ13の活用法」という記事が掲載されていました。

AIの中には人類の知識を圧縮した広大な空間が広がっていて、その中を探索し、それぞれの知識や方向性を組み合わせることで、これまで人間だけでは生み出せなかった発想や価値を創造し得るという内容です。

ここで紹介されている13の活用法の中のひとつに、異なる分野の間にアナロジー(類推・喩え)を見つける、という話がありました。異なる概念同士を結びつけることで、新しい意味を見出す。

実はこれは、統合医療やホリスティックなアプローチの考え方そのもののように感じました。

西洋医学と東洋医学、遺伝子特性とアーユルヴェーダのプラクリティ、精神状態とウェアラブルデバイスによる測定など、一つの物事や状態を別の角度から捉える時に、これまで気づけなかった自分と出会うことができるかもしれないと改めて思ったのです。

ホリスティックという言葉は、少しふわっとした、得体の知れない何かに聞こえるかもしれません。

でも僕にとっては、もっと実務的なものです。

正面から押して動かなかったものを、横から動かしてみる。

ただ、それだけのことだと思います。

体のこと、心のこと、暮らしのこと。

どこから手をつければいいのかわからなくなった時ほど、その入口は少し離れた場所に隠れていたりするのかも知れません。

第2章 今週のテーマ同じ深呼吸でも、効き方は違う。目的から選ぶ、10の呼吸法

INNERTRAVELER.aiでは、お悩みの改善や健康増進だけにとどまらず、毎日を快適に、自分らしく創造的な日々を送るためのヒントを精密栄養学の視点からご提供しています。

同じ深呼吸でも、効き方は違う。目的から選ぶ、10の呼吸法

第1章では、異なる分野をクロスオーバーさせることの大切さについてお話しをさせていただきました。

私たち自身について改めて考えてみても、心と体を整えることとは、つまるところ自分の内側にあるアイディアや想いと、実際の行動をスムースにクロスオーバーできるようになることのように思うのです。

自分が本当にやりたいことをやる、心から湧き上がってくる感情に耳を傾ける、疲れた時にはしっかりと休息をとる。

そんな当たり前のことも、忙しくてノイズのあふれる現代社会では、時に置き去りにされがちです。

そんな時、心と体を一致させるために有効なのが、呼吸法ではないかと思っています。

心臓の鼓動や胃腸の動き、血圧などは、自分の意思では直接動かすことができません。これらを動かしているのは自律神経と呼ばれる仕組みです。

ところが、呼吸だけは違います。自律神経が担っているもののうち、自分の意思でも動かすことができる、数少ないもののひとつなのです。

しかも、吸う時と吐く時とでは、働く神経が入れ替わります。

息を吸うときには交感神経が優位になり、吐くときには副交感神経、なかでも迷走神経が深く関わると言われています。

ということは、吐く息を吸う息より長くするだけで、体は落ち着く側へ傾いていくことになります。

イライラした気持ちを頭で抑えようとしても、なかなかうまくいきません。けれど、吐く時間を倍にすることなら、いまこの場でもすぐにできます。

さらに面白いのは、呼吸は場面と目的によって使い分けができるということです。

夜、頭が冴えてしまって眠れない時。人前に立つ直前、心臓の鼓動が速くなっている時。集中したいのに、気が散ってしまう時。不安が大きくなって、胸のあたりが苦しい時。

それぞれの場面において、効果的な呼吸法は異なります。

今回のLABOでは、これまで学んできた呼吸法を、場面と目的から整理し直しました。

すべての土台になる腹式呼吸から、眠れない夜の4-7-8呼吸、人前に立つ直前に使えるダブルインヘイル、頭のおしゃべりを止めるブラマリ呼吸法まで、全部で10種類。

どんな時にどれを選べばいいのか、早見表もつけています。すべてを覚える必要はありませんので、ご自身の困りごとに近いところだけ拾い読みしていただければ十分です。

LABO|精密栄養学の研究ノート場面と目的で選ぶ、あなたに合った呼吸法とは?記事を読む →

第3章 Q&A読者の方からのご質問

Q1血液検査をするたび、自分に足りない栄養素がわかると、ついサプリを増やしてしまいます。どうしたらいいでしょうか?

A実は僕にも、同じような経験があります。

しっかり食事はとっているのに、タンパク質、ビタミンC、ビタミンD3、マグネシウム、亜鉛などの値が理想値よりも低かったことが、ある時に受けた血液検査でわかりました。

以前から飲んでいたサプリに加えて、これらを追加で補おうとしたら、1日で10種類近いサプリを飲むことになってしまいました。。

とりあえず飲み始めたものの、どれが効いているのかよくわからない。

その上、毎月のサプリ代も、決して安くはありません。

そんな状態を数ヶ月続けた後で、疑問が出てきました。

“なんでこんなにサプリを飲んでいるんだっけ?”

正直に言えば、「不安だから」という理由でした。

より健康になって、心も体も軽くなることを目指していたのに、蓋を開けてみたら、自分から不安の種を探しに行って、そんな気持ちに蓋をするためにサプリを増やしていたように思います。

もちろんそれによって血液検査の数値が良くなったり、体感が改善した部分も多々あるのですが、不安を打ち消すために飲んでいたと言う部分も少なくありませんでした。

これはあくまでも僕の個人的な体験ですが、精密栄養学の視点から皆様にお伝えしたいことは、下記の2つです。

ひとつめは、飲み合わせです。

実はサプリメントには、互いに効果を高め合うものもあれば、打ち消し合ってしまうものもあります。たとえばビタミンD3とマグネシウムは助け合う関係にありますが、一方で銅と亜鉛は拮抗する関係にあります。どちらかを増やせば、どちらかが減ってしまう、そんな関係性です。

もうひとつは、栄養素を代謝する内臓への負担です。

飲んだものは、肝臓や腎臓を通っていきます。種類が増えるほど、そこにかかる仕事も増えていくことになります。つまり過剰なサプリは、内臓に負担をかけてしまうのです。

そして、ここからは少し違う角度のお話です。

アーユルヴェーダには、「人は食べたものでできているのではなく、消化したものでできている」という考え方があります。

どれだけ良いものを口に入れても、それを消化して吸収する力そのものが落ちていれば、体の中で使われないまま残ってしまう、という視点です。

アーユルヴェーダでは、この消化の力をアグニと呼び、未消化のまま残ってしまったものをアーマと呼びます。そしてアーマは、詰まりや慢性的な炎症のもとになると考えられています。

つまり、足りないものを足していく前に、まずは受け取る側がきちんと働いているかどうかを見ていく。足し算の前に引き算が大切、という視点です。

これは精密栄養学の考え方とも、きれいに重なります。血液検査からも、消化と吸収の状態はある程度読み取ることができます。Vol.10でお話しした尿素窒素(BUN)と総蛋白の関係も、そのひとつです。

そのうえで、あれもこれもと足しすぎてしまう前に、何のためにそれを飲むのか、飲んでみて体感や体調はどう変わったのか。

遠回りなようでも、ひとつずつこれらを自分自身で確かめながら、その時々の体調に合ったものを選んでいけるようになる。それをぜひ忘れないで頂きたいと思います。

なお、飲み合わせや量については、ご自身だけで判断なさらず、必要に応じて医師や薬剤師にもご相談ください。

Q1断食をするとなんだかスッキリします。どれくらいの頻度でやるのがおすすめですか。

A過剰な糖質やアルコール、添加物など、体に負荷のかかる食事が続いている時に、断食やファスティングで、すっきりしたと感じる人もいます。

体の中の余分なものだけでなく、頭の中のノイズも一緒に取り除かれていく。その結果として、クリアな体と思考が生まれ、リフレッシュにつながる可能性があります。

これらは近年、ダイエットやデトックスの文脈から注目されることが多いように感じますが、歴史を紐解くと実はこれらはもともと少し違うものでした。

古来より断食は世界中の宗教や修行の中で、意識を変えるためのひとつの道具として捉えられてきたものです。

そしてここでも、第1章と同じようにクロスオーバーの視点が当てはまります。心や気分をスッキリさせるために、食べるのをやめることでアプローチする。つまり、正面からではなく、横から入っているわけです。

ただし、ここからが大事なところです。

いつやるのか、どのようにやるのか、そしてそもそも今のご自身に向いているのかどうか。ここは慎重に、ご自身の体と相談していく必要があります。

具体的には、始める前に次のような点を見ておきたいところです。

エネルギー生成のもとになる糖質や脂質が、ある程度たくわえられているか。ミネラルやビタミンB群は足りているか。そして何より、その期間をしっかりと持ちこたえられるだけの体力があるかどうか。

やみくもに始めてしまうと、必要以上に栄養素が失われてしまう危険性もはらんでいます。

持病のある方、お薬を服用中の方、妊娠中・授乳中の方、成長期のお子さま、そして摂食障害のご経験がある方には、ファスティングはおすすめできません。始められる前に、まずは必ず医師にご相談ください。

やり方は、水だけで行うもの、酵素ドリンクを使うものなど、いろいろとあります。

僕自身も、ときどきファスティングを行っています。

その先にあるクリアな感覚を一度体験してしまうと、また味わいたくなりますよね。ぜひ無理のない範囲で、まずは血液検査や専門家へのご相談を挟みながら、方法とタイミングを選んでみてはいかがでしょうか。

Q1遺伝子検査を受けるメリットはなんですか。いまひとつよくわからないのですが。

Aご質問ありがとうございます。まだまだ一般的とは言えない遺伝子検査ですから、疑問をお感じなのはごもっともだと思います。

少し整理をさせていただくと、遺伝子検査とはあなたが生まれつき持っている特性を示す「地図」のようなものです。

一方で、血液検査や腸内環境の検査は、あなたが「いまどこにいるのか」を示してくれる現在地にあたります。

地図だけあっても、現在地がわからなければ目的地にはたどり着けません。反対に現在地だけわかっても、地図がなければ、どちらへ進むべきかがわかりません。

この二つを重ねてはじめて、本来のご自身からどれくらい目的地が離れているのか、そしてどのように進んでいけばいいのかが見えてきます。

Vol.11でお話ししたアーユルヴェーダのプラクリティとヴィクリティ、生まれ持った設計といまの状態という考え方も、まったく同じ構造です。

古代インドの枠組みと最新の検査が、同じ視点の知識体系を持っている。これは非常に興味深いと感じています。

その上で、実務的なメリットを三つ挙げます。

①一度調べれば、ずっと使える

いまの体の状態を示す血液検査のデータは、その都度変化します。一方、遺伝子の配列そのものは生涯変わりません。一度調べておけば、この自分の体質や特性などの情報はずっと使い続けることができます。

②「なぜ自分だけ?」の理由が見えてくる

人と同じものを食べて、同じように過ごしているはずなのに、結果が違う。そういう場面の背景には、代謝の個人差が関わっていることがあります。Vol.11でご紹介した僕のCOMTの事例も、そのひとつだと考えていました。自分の遺伝子を理解することは、自分自身をより深く知るための大きな手がかりになります。

③やるべきことに優先順位をつけられる

これが、いちばん実用的かもしれません。世の中には健康法が無数にありますが、そのすべてを試すことはできません。ご自身の弱点がどこにあるのかがわかると、やらなくていいことも自ずと決まってきます。

アルコールやカフェインはどれくらい摂取できる体なのか、花粉やアレルギーに反応しやすいのはなぜなのか、食事を減らしても痩せないのはなぜなのか、その理由を探る手がかりになります。

一方で、注意していただきたい点もいくつかあります。

遺伝子はあなたの運命を「決定」するものではなく、あくまで「傾向」を示す参考情報です。

Vol.12でお話ししたとおり、遺伝子は持っているだけではその通りに働きません。スイッチが入るかどうかは、日々の食事や生活習慣が大きな影響を与えます。

また、ここでお話ししているのは栄養や代謝の傾向を見るための検査であって、病気のかかりやすさを判定する医療的な検査とは別のものです。

そして、何よりいちばん大事なことは、なぜ遺伝子検査を受けるのか、その目的だと思います。

結果を見て、かえって不安になってしまう方もいらっしゃいます。ですから、何のために知りたいのかということを、まずはご自身の中でじっくりと向き合ってみていただければと思います。

検査の値段も方法も、本当に幅があります。地図は、行き先まで決めてくれるわけではありません。ただ、遠回りはずいぶんと減らしてくれるはずです。

取るべき、または控えるべき食事はもとより、人間関係におけるヒントなど。

誰かのための不確かな情報ではなく、あなた自身の中にある設計図と地図を手にして、これからの日々をよりストレスなく、自由にお過ごしいただくための大きな可能性が遺伝子検査にはあると、僕は考えています。

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※ この内容は、精密栄養学の考え方と筆者自身の経験にもとづく一般的な情報です。病気の有無を判定したり、治療を行ったりするものではありません。体の感じ方や効果には個人差があります。気になる症状がある時は、自己判断なさらず、医療機関にご相談ください。